中村 そのエピソードから伊都子さんの日記に辿り着いたんですね。
林 はい、面白いなあと思って。いろんな思惑が働いて、身分のある方たちの結婚っていうのは、本当に大変なんだなということを感じましたね。
中村 確かにそうですよね。眞子さまの件でも、やはり身分のある方のご結婚に対しては、いろいろな人がいろいろなことを言いたいんだな、と思いました。
林 そうですね、本当にそう思います。
中村 書くにあたってこれは大変だった、ということはありますか?
林 私みたいな山梨出身の庶民の娘が、皇族妃になりきってセリフを書かなきゃいけない、というのが本当に難しいところでした。これができるかできないかというのが、作家の分かれ道だと思います。
中村 確かにそれは難易度が高いですね。
林 今の人の考えで書いてはいけないんですよ。例えば、ものすごく上から目線で物事を見るのは当たり前だし、とても高慢だし…。
それから、日韓併合を今の価値観で語ることはできません。当時の皇族妃に「日本は何てひどいことをするんですか」などと言わせたら、これは間違いなんです。当時のやんごとなき方々は、日本がアジアの長兄として、遅れている国を欧米の脅威から守ってやろう、と本気で思っているわけですよ。なのに何でこの国の人たちは反抗して言うことを聞かないのか…そんな風に思っている。
当時の皇族妃という人の目となり頭となって小説を書くのが、大変なところでもあり、楽しみだったと、今では思いますね。
中村 それがリアリティにも結びついてきましたね。
林 そうですね。今回はとても楽しんでうまく書けたかな、と思っています。
中村 連載中、大変だったという話は折に触れて伺っていました。皆さん、ぜひ手に取って読んでください。
林 よろしくお願いします。