きっかけはミュージックビデオ…ダフト・パンクからのオファーを松本零士が快諾
「One More Time」を収録した2001年のセカンドアルバム『Discovery』は、彼らが幼少時代を過ごした70年代のディスコ・ミュージックを再構築し、幼少時を過ごした時代への深い愛情と憧憬をもって二度と戻れない時代を“もう一度”再現しようとするプロジェクトだった。「音楽的には作りたいものを作れたから、その次の段階としてビジュアルに進んだ」と語る彼らは、『Discovery』収録曲のミュージックビデオをアニメーションで制作することを発案。幼少期にフランスで放送されたTVアニメ版『キャプテンハーロック』(仏題『Capitaine Albator』)に夢中だったことから大胆にも原作者・松本零士のもとを訪れ、コラボレーションをオファーする。
若い頃からフランス映画に親しみ、中でも『わが青春のマリアンヌ』(1955年)に多大な影響を受けたという松本はダフト・パンクの依頼に運命的なものを感じて、これを快諾。松本の代表作のひとつ『わが青春のアルカディア』は、第二次世界大戦時を舞台に宇宙時代のハーロックたちの先祖の活躍を描いた物語だ。
フランスにおける日本アニメの人気がコラボの背景に
いまやフランスは世界有数のジャパンポップカルチャー人気の高い国だが、これは東映アニメーションが1976年のカンヌ国際映画祭にて海外マーケットに売り込みをかけたことに端を発する。ヨーロッパのテレビ局に何度も売り込み、門前払いを食らいながら、1978年7月、放送番組が不足していたフランスで『UFOロボ グレンダイザー』(仏題『Goldorak』)が放送開始。予想を超える高視聴率を獲得。90年代に入ると『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』『美少女戦士セーラームーン』が人気を博し、海外市場を切り拓いた。
世代と国境を超えたコミュニケーションは驚くほどスムーズに進んだという。『インターステラ5555』の監督は東映アニメーションで『ドラゴンボール』シリーズを手掛けてきた竹之内和久と西尾大介、キャラクターデザインは佐藤正樹が担当。ザ・クレッシェンドールズのメンバーは、ステラ(24歳。ベース)、ステラの兄アルペジアス(27歳。ギター)、バリル(20歳。ドラム)、オクターヴ(32歳。ヴォーカル&キーボード)。クレッシェンドールズの大ファンでステラに恋愛感情を抱くパイロットのシェプ、ダークウッド伯爵らが絡み、トーマとギ=マニュエルもカメオ出演している。
劇中にはノスタルジーを感じさせるアイテムが次々と登場するが、特に重要なのが「ゴールドディスク」。ゴールドディスクは売り上げに貢献した作品を生んだアーティストに対し各レコード会社が与えるもので、第1号は1942年2月、映画『銀嶺セレナーデ』で使用されレコードが120万枚を売り上げたグレン・ミラー楽団「チャタヌガ・チュー・チュー」(Chattanooga Choo Choo)。以来、音楽業界における成功のバロメーターとなっている。
近年は2023年10月26日、米津玄師が日本語詞曲「KICK BACK」(アニメ『チェンソーマン』主題歌)で初の米ゴールドディスク認定されたことが話題になったが、YOASOBIの「アイドル」(アニメ『推しの子』主題歌)や今年ヒットしたCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」(アニメ『マッシュル』主題歌)など、いまやアニメーションは日本人アーティストの世界進出に欠かせない存在だ。