私はこれまでに多くのトンネルを見てきたが、このトンネルはあまりにイレギュラーだ。内部で分岐するトンネルは全国にあるが、普通は同程度の大きさの道が分岐するし、そもそも素掘りではなくコンクリートで固められている。あまりにも異様な光景に、しばし見とれていた。
もう何もかもが異世界すぎる…
神社に行くという当初の目的を思い出し、分岐する小さなトンネルのほうへと歩いていく。なんとか身長ほどの高さはあるが、頭を打たないように身を屈めて進む。トンネルは緩やかな下り坂になっていて、出口付近は階段になっていた。
外に出ると、そこには断崖絶壁にへばり付くようにしてお社が建立されていた。トンネルも凄いが、お社も凄い。もう何もかもが異世界すぎる……。
異空間に迷い込んでしまったかのような不思議な感覚に陥りながらも、お社に参拝する。
断崖絶壁の僅かなスペースを、おそらく岩を切り広げて拡張し、お社を建てたのだろう。後方は屋根の上にまで岩がせり出し、まるで建物が岩にめり込んでいるかのようだ。前方はというと、崖下にダム湖が広がっている。
地図アプリでは八雲神社と表記されていたが、現地に神社名を示すものは何もなかった。神社というには、とても簡素な気もする。
参拝を終えて帰路についたが、あまりにも気になる場所だった。岐阜の自宅に帰ってからも色々と調べたが、情報は少なかった。そこで、神社がある君津市役所に問い合わせてみた。
君津市役所によると、内部で分岐するトンネルの正式名称は“梅ノ木台2号隧道”、その手前にあった直角カーブのトンネルは“梅ノ木台1号隧道”という。君津市が管理している市道にあたるが、台帳に記載がなく、来歴や完成年も分からないとのことだった。
そこで、地元の方に話を聞いてみると……。