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――コンパスで頭を刺されたり、教科書を捨てられたりしたことも書かれていましたが。

アレン だから、そこに至る前よね。最初は、「ん?」っていう違和感からはじまるのよ。その違和感の時間がすっごいキツかったんですよね。

 数日前まで仲良くしてた友だちの態度が、ある日を境に急に他人行儀になっていくんだよね。一緒にご飯に行ってたのが、先にみんなが出て行っちゃうとかね。「確信はないけど、でも明らかに違う」っていうのが、徐々にハッキリした「いじめ」に変わっていく。その間がすごいしんどかった。

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 掃除のときに自分の机だけ誰も触ってくれないとかもキツいよ。そりゃキツいのは当たり前なの、いじめられてるってわかってるから。なんだけど、それよりも精神的にこたえたのは、いじめかどうか判然としない時間だった。

©細田忠/文藝春秋

幼稚園のときから「普通」じゃないってわかっていた

――小学生の時から「普通」ではない自分に劣等感があり、家の中で暴れるようなこともあったそうですが、その一方で健康意識があって、大麦若葉をシェーカーで作って飲んでいたというエピソードも印象的でした。

アレン はいはいはい! 変わった子だったんだよね、ほんとに。でも、ちょっとおかしなところって誰でもあるじゃない。変なこだわりとかね。そういうところも含めて、本来の自分を出せない期間が長かったのよ。

――今のアレン様になる前のアレン様って、どんな感じだったんですか。

アレン 幼稚園のときから自分は「普通」じゃないってわかってたのよ。男の子の遊びにも全然興味なかったし。小学校から「オカマ」って言われてたから無理して男っぽく振る舞って、頑張って友だちの輪の中に入ろうとしてた。でも結局、中学で受けたいじめがきっかけになって非行に走って少年院まで入って。

 東京に出てテレビに出てからも、ずっとくすぶってたのよ。自分のキャラをずっと隠してメディアに出てたし。

©細田忠/文藝春秋

今は、本来の自分を出せてすごい幸せ

――一番出すのを躊躇した部分はどんなところですか。

アレン 自分のどこっていうよりも、親の目とか地元の目とか、その当時は若かったから、周りの目を気にし過ぎてた部分があるのかもしれない。

 あと、最初にテレビに取り上げられたとき、「整形依存ヒモ男」みたいなキャラにされちゃったから、いきなり素の自分を出すのも怖かったのよ。

――そんなときに、「もっと素を出せばいいのに」とお友だちから言われたことが転機になったそうですね。

アレン 「アレン様の中で何が変わったの?」って聞かれたとき、1個しか答えはほんとになくって。何も恥ずかしがらず、本来の自分を全部出すようになったから、ってだけなのよ。

©細田忠/文藝春秋

 あたしはずっと、「なんでプライベートではすっごい面白いのに、テレビでは面白くないの?」って言われてたの。それで「何をそんな怖がってるんだろう?」って自分でも考えて、別に笑い者になってもいいし、ってか、いつもの自分でよくない?って。

 それを身をもって知ったから、本来の自分を出せない会社とか環境だったりっていうのは、全部失敗に終わると思ってる。実際、自分がそれで失敗したからわかるのよ。だから今は、本来の自分を出せてすごい幸せね。