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有名歌舞伎ファミリーを惨殺した犯人は…
通報を受け駆けつけた警察は現場の惨情に絶句する。全員が頭部と顔の上部を激しく損傷しており、部屋に飾られていたひな壇と唐紙まで凶行の返り血を浴び朱に染まっていた。特に登志子夫人は滅多打ちにされており、鼻柱から大量の血が噴出していた。
警察は現場の状況から犯人がまず八畳間で仁左衛門親子3人を殺した後、逃げ回る岸本さん、榊田さんを別室四畳間で殺害したうえ、2人の死体を八畳間に運んだものと推定。家の庭先に血まみれの薪まき割り用の斧が遺棄されていたことから、これが犯行に使われた凶器と断定する。また、前々日払い出した郵便貯金600円(現在の貨幣価値で約2万4000円)が失くなっていることも判明。
捜査当局は2歳の幼児まで容赦なく殺害している残忍さから怨恨が動機と睨むとともに、前日まで仁左衛門家に同居していた、岸本まき子さんの実兄・飯田利明(同22歳)の姿がないことから、飯田を重要容疑者として、その日のうちに全国に指名手配する。