視力は0.01、視野は「0度」…どのような“見え方”なのか?
――先ほど「視力が低い」のも症状のひとつと言っていましたが、現在の目の状態は?
りり香 視力は0.01で、ぼんやりとしか見えません。視野はほとんどなく、眼科の先生からは「視野0度」と言われています。病気の特性上、眼鏡やコンタクトレンズで矯正することはできません。
――視力0.01、視野0度とは、どのような見え方なのでしょうか?
りり香 「視野0度」の世界は、常に水泳のゴーグルをかけているのをイメージしていただくと分かりやすいかな、と思います。目の前のものは見えるけど、少しでも上下左右にずれると、まったく見えなくなります。
ただ、生まれてから「見える世界」を経験したことがないので、ほかの人との比較の仕方が分からないんですよね。
あとは、目に色素がないので、他の人には眩しくもないような光も眩しく感じてしまいます。明るい蛍光灯の下や日光の下だと、物は良く見えないし、心身ともに疲労して、体調が悪くなってしまうことも多いんです。
——外に出かけるのも大変ですよね。
りり香 一人で初めての場所に行くときは、困るというか不安ですね。目が悪くてGoogleマップがうまく使えないから、道順が分からない。慣れない道を手探りで歩くのも怖いから、タクシーを使うか、一緒に行ってくれる方を探します。
「私の目って、人と違うんだ」と痛感した出来事
——幼少期に、目が見えづらくて困った経験はありましたか。
りり香 正直、子どものときに日常生活で困った記憶はあまりないんです。小学生時代はいつも教室の最前列、ど真ん中の席に座らせてもらっていたので、板書もなんとか見えていました。もし見えないところがあったら、近くの席の友達や先生に聞いて解決していました。
あ、でも星の観測の課題は困ったというか……。「私の目って、人と違うんだ」と思うきっかけになりました。
――星の観測の課題?
りり香 夜空を眺めて、星をスケッチする課題があったんですよ。私には真っ黒な空に、1、2個の星がかすかに光っているくらいしか見えないのに、周りの子たちは「満天の星空だ!」と盛り上がっていて。頭では自分が視覚障害だと分かっていましたが、「こんなに他の人と見え方が違うんだ」と初めて痛感しました。
ただ、困った記憶といえばそれくらいです。当時通っていた小学校には、私のように病気の子もいれば、障害を持った子、外国から来た子など、いろんな子がいました。
「人と違って当たり前」の環境だったから、私も病気を気にすること自体がほとんどありませんでした。何より、困っていたら助けてくれる優しい人が多かった。周りの方に本当に恵まれていたな、と思います。
撮影=細田忠/文藝春秋