竹刀で西村を滅多打ち、身体のあちこちから赤黒い血が…
「お前は、犬以下や。ドッグフードでもやっておく。悔しかったら、死ね!」
西村は、さめざめと泣いていた。
私は、それでも足りないと思った。
西村を家に上げて素裸にして、裸のまま天井からぶら下げた。鬱血するほど長時間ではない。
ものの10分ほどの間だ。
私は竹刀を手にすると、西村を滅多打ちにした。
気がつくと、ボロボロになった竹刀が2本床に転がっていた。
西村の身体のあちこちから赤黒い血が噴き出している。気のせいか、あたりには血の匂いが立ち込めていた。
私はさすがに自分のおこないを悔いた。人にやらせるべきことを自分でしてしまった。
それも仕方ないか。極道の世界では幹部にあたる男に脅される。西村はそんな舞台に私を引っ張り出したのだ。黙っているわけにはいかない。
西村とのバツが悪い再会
「同じような目を、味おうてわかったろう。堪忍したるから、詫び入れて、二度とワシの前に顔を出すな。出て行け!」
西村を帰らせた。
〈下手したら、そのまま電車の線路に飛び込むかもしれんな〉
そんな危惧もあった。だが、現実のものとはならずに済んだ。
その後、西村とは3回ほど会うことがあった。京都駅の在来線ホームで二度、新幹線ホームで一度。
私は京都・大津方面に行く際、いったん新幹線で京都駅まで行く。自動車は先乗りさせておき京都で乗り換えるのだ。
あるとき、京都駅で電車を降りた。ふと脇に目をやると、見覚えのある顔があった。誰あろう、西村嘉一郎その人である。
電車を乗り継ぐところだったのだろうか。ホームにぼんやりと立っていた。
そうしているうちに、向こうも気づいた。まともに視線がぶつかった。
西村にしてみれば、さすがにバツが悪すぎるに違いない。何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。頭だけは一応下げて見せる。こちらから何がしかのものを言う気にはとてもなれなかった。