それにしても、センシティブな問題です。小児性加害者と実際に接すると、明らかにその文化が小児性愛という加害的な嗜好の入り口だったのだろうと思わされる人も少なくありません。もともと子どもに性的関心があったわけではないけれど、アニメやマンガで幼い子が性的に凌辱されている、またはそのように見えるシーンと出くわし、性的な興奮を覚え、その後、子どもにしか性的関心を抱けなくなったと語る人もいます。
加害者にならないようにする性教育が重要
だからといって、そうしたコンテンツを諸悪の根源として、すべて規制すればいいのか――。個人的には、あまりに野放しな現状を見ると、なんらかの規制はあってもいいのではないかとも思います。しかし、あくまでフィクションとして描かれているものを、「現実とは違う」「現実の子どもにしてはならない」とわかったうえで接する姿勢が多くの人に徹底されていれば、被害者が出る事態にはつながりにくいはずです。
規制が現実的ではないのなら、こうしたコンテンツに触れる年齢になる前に、性教育でそのことをしっかりと教える必要があります。日本では現状、性教育が圧倒的に足りていません。規制するかしないかの議論に終始するのではなく、そうした表現に触れた人が加害者にならないようにする性教育をどう実現するかという議論も必要です。
私が気にかかっているのは、子どもを性的に描く表現が、成人を対象としたポルノ作品にとどまらないということです(ポルノ作品であればいい、という意味ではありません)。未成年でも制限なく目にすることができる青年コミック誌、ややもすれば少年コミック誌にもそのような表現が見られることがあります。これを子どものころから目にしていれば、知らず知らずのうちに「子どもに性的な関心をもっていい」と植えつけられてしまいます。
嗜好をもつことと実行に移すことは別問題
小児性加害者132名の生育歴を調査した研究では、10歳未満でポルノに触れる割合が65%だったという報告もあります。当然これは、記述統計といって、数字のみを述べたものなので、ポルノに触れた経験と加害行為の因果関係まではわかりません。一方、こうしたコンテンツで子どもへの性的関心が芽生えたとしても、すぐに加害行為に出る人は多くはないのです。このことからも、直接の因果関係を証明するのはむずかしいでしょう。