子供を性被害から守るには、どんな対策が必要なのか。小児科医の今西洋介氏は「見た目が怪しい人ばかり警戒しても意味がない。性加害者は周到に用意して子供に接触するチャンスを狙っている。その特性を知っておいたほうがいい」という――。
※本稿は、今西洋介『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
※本稿には性暴力についての具体的な事例・事件や描写が含まれています。
アニメやマンガの表現は小児性暴力を助長するのか
いまでも日本では、“オタクっぽい”男性が、子どもを性の対象とするイメージが根強いと思います。そこで、アニメやマンガなどにおける幼い子どもの表現が、小児性暴力を助長しているのではないかという疑問について考えたいと思います。実際、そうしたコンテンツで子どもが性的に表現されることがありますし、作者にその意図がないコンテンツでも読者・視聴者が性的な目で見ることはあるでしょう。
ただし、社会にそうしたコンテンツへの偏見があることを抜きに、この話をしてはいけないとも感じます。1988〜89年に発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人は、部屋から大量のビデオテープが押収されたと当時報じられました。「幼い女の子が登場するアニメやマンガが大好きだったことが、4人の子どもにわいせつ行為をし、殺害した一因となっている」という論調がメディアによって形成されたのを、覚えている人は少なくないでしょう。
このように因果関係がはっきりしないセンセーショナルな報道は、アニメやマンガを愛好する人たちへの偏見につながります。
因果関係を証明する科学的検証は進んでいない
その因果関係を検証するべく海外の論文を探しても、科学的に書かれたものは、あくまで私が検索したかぎりですが見つけられませんでした。論文以前に、アニメやマンガで子どもを性的に描くという文化が、日本以外にはほとんどないのです。日本に特有の課題だといえますが、国内でも研究や科学的検証が進んでおらず、一般的な議論も十分になされているとはいえません。科学的根拠にもとづかない感情論をぶつけ合うのは、議論とはいえないでしょう。