フードコートのトイレ前で父親のふりをした男
家庭内の性的虐待では、加害者の最も身近に子どもがいます。一方で家庭外の性加害の場合、加害者がその歪んだ欲望を行動に移すには、まず子どもに接触するところからはじめなくてはなりません。そのチャンスが多いか少ないかは人によりますが、なくてもつくり出せるのがおそろしいところです。
たとえば、こんな事例が報告されています。フードコート近くのトイレ前で、子ども用のリュックや水筒を持って座っている男。誰もが「子どもがトイレから出てくるのを待っている父親だ」と思うでしょう。しかし男は、そうした小道具で“父親に擬態”しながら、子どもを襲うチャンスを待っていた――。
現場の警備員が、1時間もずっとトイレの前に座っている男を不審に思って声をかけ、このときは事なきをえましたが、男がそれまでにこの方法で性加害をしなかったとはかぎりません(*2)。
*2:まいどなニュース2022年6月4日配信、竹内章「『あの人、おかしい』トイレ横のベンチに1時間 女児を目で追う男 確信した私服警備は」
ひとりでトイレに行った3歳に何が起きたか
近年は育児に積極的な男性が増え、こんなお父さんの姿はめずらしくありません。それ自体はよろこばしいことなのに、子どもの面倒をみる父親を装って性加害をしようとするのは、実に卑劣です。性加害者は子どもがひとりきりになるチャンスを常にうかがっていることが、よくわかる事例でもあります。
子連れの外出では、ひとりで用を足せる年頃であれば「行っておいで」と子どもだけでトイレに行かせることもあると思います。プールの更衣室なども同様です。「短時間のことだし、親がすぐ近くにいるのはあきらかだし、大勢の人の目があるから大丈夫」と思いがちですが、その裏をかく事件は起きています。有名なものでは、2011年に発生した、熊本3歳女児殺害事件があります。
両親と5歳の兄とスーパーに買い物に来ていた女の子がトイレに行きたがり、手を離せなかった父親はひとりで行かせることにしました。そのあとを男がついていき、女児を障害者用トイレに連れ込み、性加害をし、殺害した――この間、たったの15分。男は、その小さな遺体をリュックサックに入れてスーパーをあとにし、排水口に遺棄したという、非常に残忍な事件です。