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熱帯魚をパクリ

 敗戦後の昭和22年、伏見宮家をはじめ宮家が一斉に皇籍を離脱しましたが、そのすぐ後も、上皇さまと千葉にあった御料牧場に1泊して乗馬をしました。一緒に風呂にも入りました。

伏見博明氏 Ⓒ文藝春秋

 上皇さまは子供のころから動物がお好きで、高等科時代は馬術部、馬は皇居にもたくさんいました。しょっちゅうポロをしていて、お誘いの電話が頻繁にかかってきました。途中から私がゴルフにハマってしまい、お断りを続けたらお誘いの連絡が来なくなってしまいましたが……。

 上皇さまといえば、ハゼのご研究でよく知られていますが、ご成婚の前に一度、御所の水槽で飼っている熱帯魚を見せてもらったことがあります。金魚くらいのサイズの小さな熱帯魚でした。2人で見ていたら、上皇さまが突然、「食べると美味しいんだよ」とおっしゃって、侍従に醤油を持ってこさせたのです。私は「熱帯魚は観賞するものではないのですか」とお伝えしたのですが、上皇さまは構わず水槽に手を突っ込んで、1匹を取りだすと、醤油をつけてパクッと食べてしまったんです。そして「きみもどうぞ」と勧めるものですから、断るわけにもいかず、同じようにして食べました。美味しい、まずいなどと言っていられる状況ではなかった(笑)。生きた魚が喉を通っていくのが動きでわかりました。

※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「皇太子明仁 日光疎開の思い出」)。全文では、学習院で戦争ごっこをしたエピソード、皇族の特殊な家庭環境、伏見氏が感じる上皇さまの「覚悟」などについても語られています。

 

この特集では、昭和の忘れがたい人物100人の姿を、意外な著名人、親族が紹介しています。

・「佐藤栄作 祖父の笑い声」阿達実花

・「後藤田正晴 質問いくぞ。いいか」的場順三

・「竹下登 踊るおじいちゃん」DAIGO

・「金丸信 変幻自在のカメレオン」田﨑史郎

・「本田宗一郎 野人のパワー」本田博俊

・「三笠宮崇仁 おじいちゃまの快哉」彬子女王