そろそろ郷ひろみのバラードをガッツリ見たい
「(ダンサーから)楽しんでやることを教わりました」――。郷のこの69歳とは思えない謙虚さと身体能力とチャレンジ精神は、見るだけでエネルギーをもらう。もはや「郷ひろみが若手以上に弾ける姿」そのものが一つのエンタメである。これから高齢者が全人口の多くを占める時代になっていく日本。彼のように、年齢を重ねてもパワフルかつハッピーに現役として挑戦を続ける人は、どんどん求められていくことだろう。
2024年を振り返ってみても、80年代とは違ったカッコよさを見せた柴田恭兵と舘ひろし主演の映画『あぶない刑事』、90歳の草笛光子主演の映画『九十歳。何がめでたい』も大ヒットとなった。朝ドラ「おむすび」で主人公の祖父役をする松平健が出す圧倒的な明るさも話題だ。郷ひろみを毎年紅白で観る、というのも同じ意味がある。経験を積みながらもなお成長を止めず、時代を楽しく生きていく、一つ上の世代の「陽」から、心強さと安心感をもらえるのだ。
今年の曲目も、「2億4千万の瞳」。ただ「放送100年 GO!GO!SP」というサブタイトルの通り、来年迎える放送100年にちなみ、NHKが長年蓄積してきたアーカイブ映像に、郷のパフォーマンスを絡ませるというから楽しみだ。郷が船長をつとめる“時空の旅”、目が足りないくらいブチ上がることは間違いない。
ただ、郷ひろみの名曲はテンションの高い曲ばかりではない。彼はバラードの名手でもある。2016年(第67回)紅白の、土屋太鳳とコラボレーションした「言えないよ」の名演が記憶に残っている人も多いだろう。あの、舞台を一瞬にしてロマンチックに染める歌唱力と表現力。彼が持ち前のパッションで紅白のテンションをあげるのももちろん楽しみだが、そろそろバラードを歌う郷をガッツリ堪能したい。「逢いたくてしかたない」「哀愁のカサブランカ」を聴く準備はいつでもできている。
紅白の常連と言えば石川さゆり
そしてもう一人、紅白の常連と言えば石川さゆりである。彼女は1977(昭和52)年から連続出場。今回で48年目、47回目の出場となる。紅白の歴史の半分以上を体験している計算だ。これは偉業と言えるだろう。
さらに特徴的なのは、2007年から、「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」を交互に披露するルーティン状態となっていること。しかし、飽きられるどころか、もはや年末の風物詩となっている。紅白歌合戦は見ないが、石川さゆりの歌唱の前後だけチャンネルを合わせる、という人もいるほど。常に気鋭のアーティストとコラボして、同じ曲ながら、新鮮な迫力を生み出しているのも、一つの要因だろう。加えて、彼女がフィナーレで必ずつける、新年の干支のヘッドアクセサリーもまた話題。年越し前の一つのお楽しみとなっている。