告発した人々への誹謗中傷
そして2024年9月には、元所属タレントが性加害の認定や謝罪を求めて活動してきた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が解散した。トラウマに苦しみながら性被害を告発した方々の勇気には敬意を表するべきであるが、SNSでは「補償金が欲しいだけの連中」「売名行為」という陰湿な攻撃やセクシャリティにまつわる誹謗中傷が彼らを二重に傷つけている実情があり、被害を訴えていた元所属タレントの40代男性が自殺したことが2023年11月にわかった。恋愛や性行動がわからない少年期に受けた“魂の殺人”は親きょうだいや親友、配偶者にも話せない秘密であり、生涯そのトラウマから解き放たれることはない。
組織的に隠蔽・看過してきた業界全体の罪
ジャニー氏はすでに亡くなっており、「刑事事件になっていないため報道に及び腰だった」という新聞記者の証言がある。だがそれは、後ろめたさを隠す保身のための言い訳にすぎない。深刻な性犯罪を芸能界の通過儀礼として黙認し、関係する業界全体で組織的に隠蔽、あるいは知っているのに見過ごしてきたことが主犯を最終的に放免した。
筆者はジャニー氏の姉メリー藤島氏(故人・ジャニーズ事務所の実質的経営者)と面談した際、彼女の金と権力を背景にした異常なまでの万能感を目の当たりにしたが、弟の性癖について「かわいそうな子」と憐憫していたこと、元所属タレントを侮辱する発言、身内絶対優先の利己主義に呆れた。同時に、その支配力に恐怖を感じたのは二度三度ではない。これまでジャニーズ事務所がアメとムチを使い分けメディアをコントロールしてきた60年間の重みは、わずか1年で一件落着となるのであろうか。
長年昵懇だったメディアは「長いものに巻かれる」のが常態化し、つまるところ知らんふりで済ませているようだ。
「特にテレビ局は芸能と一蓮托生で、報道はどんどん軽視されている。あるテレビ局の上層部は『本物のジャーナリストは必要ない』と言い、タレントを積極的に報道番組に起用。永田町や芸能プロとうまくやると評価が上がります」(社会部記者)