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徹底した検証が不可欠

 さて一方で、騒動の影響で旧ジャニーズから独立・移籍したタレントの動向が注目されたが、個々の活動にもよるとはいえ、旧事務所の圧力はなく伸び伸びと活躍しているように見える。

「滝沢秀明氏が社長を務めるTOBE(トウービー)への移籍組はNHK紅白が出演を熱望しています。残留組の一部は冠番組が大人気です」(民放芸能デスク)

 もはや業界関係者は当事者であったことを忘れているようだ。2024年10月、NHKは旧ジャニーズのタレントの起用を再開する方針を明らかにした。

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 しかし将来似たような不幸が起きないようにするには、徹底した検証が不可欠である。旧ジャニーズ事務所は補償の進捗状況を数字のみで示しているが、それではまったく物足りない。同社は厚い壁を作っているようだ。メディアの追及もほとんどない。もちろん人権に配慮しつつではあるが、何が起きたのか具体的に説明し、後世のために記録に残しておく必要がある。徹底した秘密主義を貫いてきたジャニーズ事務所は、それが企業DNAだと常々思うのだが、せめて欧米先進国並みに情報開示はすべきであろう。構造的かつ重層的な問題を含み、検証に数年はかかるはずのこの事件をいっときの騒動で終わらせてはならない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2025年の論点100』に掲載されています。