アメリカの専門医がリモートで問診

「まずはアメリカにいる体外受精の専門医が電話かウェブ上で問診を行い、患者さんになってもらうところから始まります。その後さっそく採卵サイクルに入りますが、女性には事前に日本の医療機関でホルモン値や水痘・風疹の抗体検査、卵巣・子宮のエコー検査などいくつかの検査を受けてもらい、その検査情報をもとに現地の医師が女性の身体が妊娠に適切な状態かを判断します。並行して当社が提携する精子バンクのウェブ上から、女性が気に入った精子を選び、購入してもらいます。女性の身体が妊娠に向け適切な状態であれば、現地の医師の指示のもと採卵に向けたスケジュールを調整し、それに合わせて渡航してもらう流れです」

©beauty_box/イメージマート

 その後の流れはこうだ。最初の渡航で約2週間現地に滞在し、現地の不妊治療施設で排卵誘発剤を投与して採卵し、その後体調の回復を確認したうえで一旦帰国となる。採取された卵子はあらかじめ選んでおいた精子と受精させ、胚盤胞にまで育った時点で染色体異常の有無を確かめる着床前検査を現地の医療機関で実施する。その検査で染色体異常が無いと判断された胚は、後日の移植のために凍結保存される。子宮の準備を整えながら再び女性が渡航し、凍結保存された受精卵を融解して子宮に移植し、帰国する。

必要費用は700万円以上

 つまり採卵から移植までに必要な渡航は2回で、妊娠判定は帰国後、日本の医療機関で行う。ミラクルベビーを通し現地の体外受精の専門医がフォローするのは採卵から妊娠10週まで。費用は一連で生じる薬や医療費、精子バンクへの支払い、ミラクルベビーへの手数料などすべて合わせて、5万1000ドルだ(日本円にして700万円強)。

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「当社が提供する生殖補助医療プログラムのなかでも7、8年前から精子提供と体外受精をセットにしたサービスへの依頼が増え出し、今は提供する全プログラムのうち7割を占めています。そのほとんどが透子さんのように選択的シングルマザーを目指す女性からの依頼です」

 こう話す石原さんは、今は年に1~2回、日本に赴いて選択的シングルマザーを希望する方へ個別で相談会を行っている。ここ数年は、一度の相談会で設けている8枠の予約は、毎回すべて埋まるようになった。最近石原さんは、ミラクルベビーを利用する女性を前にして、つくづく感じていることがあるという。それは、精子ドナーを選んでいるときの女性の表情が、ものすごくいきいきと輝いていることだ。