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――お酒が苦手だから、そういう人も楽しめるみりん作りを始めたのですか?

木村 それもひとつの理由ですが、一番大きなきっかけは日本酒の営業でフランスのパリに出張したときの体験です。フランスでは、老若男女関係なく結構甘いお酒が飲まれていて。日本でも甘いお酒といえば梅酒がありますが、梅酒ってすごくお砂糖を使うんですよ。だったら砂糖の代わりに健康的な麹の甘味を使ったみりんにチャンスがあるんじゃないかと思ったんです。

©山元茂樹/文藝春秋

「飲むみりん」とは?

――そうして「飲むみりん」を開発されたわけですが、世間一般にはみりんはまだ調味料としてのイメージが強いですよね。

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木村 「おいしいみりん」を作ることには自信があったのですが売るとなったらまた別で、料理用としてのみりんのイメージを180度変えなければいけませんでした。みりんってじつは洋酒との相性も良くて、そこでまずはバーテンダーの方々に使っていただくことにしました。バーテンダーの方々って本当に勉強量や練習量がすさまじくて、皆さんが想像もしなかったような飲み物をつくってくれる。そういうところから徐々に一般の方に受け入れやすいようなところに落とし込んでいければと考えてます。

――業界ではかなり高い評価を得ていますね。

木村 世界三大酒類コンペティションの全てでメダルを受賞させていただき、世界的に有名なバーや高級ホテルバーにも使っていただきました。あとに残らないすっきりとした甘さと麹特有の香りが好評です。じつは、江戸時代には焼酎とみりんを1対1で合わせて飲むという、今でいうカクテルの原形みたいなものがあったんです。そうした歴史的な背景も踏まえつつ、上手く皆さんの持つみりんのイメージを変えていきたいですね。

©山元茂樹/文藝春秋

――豊島屋(※)発祥の文化も多くあるそうですね。

木村 鏡開きはそのひとつです。まだ戦が多くあった時代は「これから戦に行くぞ」と鏡開きをして、そこでみんなでお酒を飲んで士気を高めていたそうです。ですが江戸時代になると戦がほとんどなくなったので、私のご先祖様が鏡開きの文化が結婚式などの祝い事に使えると考え、復活させたそうです。また、豊島屋は当時から革新的な販売方法をおこなっていました。

※現・(株)豊島屋本店