「理不尽に異動させられることが怖い」
複数の職員が知事のパワハラ疑惑を見て見ぬふりをした後悔を口にした。
「(パワハラ疑惑などを)看過していたということでいえば、批判はその通りだと思う。報復というか人事の面で見られた。そういうのを見ていると管理職も声を上げにくい空気になったり、(声を上げることに)二の足を踏んでしまう。好転しないどころか悪化する」(現役幹部職員)
「人間の心の弱さ。理不尽に異動させられることが怖い。異動させられることは不名誉だし、怖い。そういうことで意見が言えなくなる。幹部が意見が言えなくなると、その部下もさらに意見が言えなくなる。こんなに危ういとは思わなかった。こんなに簡単に崩れるんだと」(現役幹部職員)
「人間の心の弱さ」という言葉が印象的だ。県庁の職員は現役であれ、OBであれ、退職後に県がらみの仕事に就くことが多いので県のトップである知事の意向に逆らうことは現実的な不利益になってしまう恐れは強いはずだ。
ある職員は“民意で選ばれた知事の意向に意見することは容易ではない”と心情を吐露した。
「何もできなかったふがいなさ。そういうものは感じるが、だからといって、じゃあ、何ができたのかといったら、根底から覆すようなことなんて本当にできなかっただろうと思う。選挙で選ばれた人が4年間はそこにいるわけだから。それは仕えないとしょうがない」(OB職員=幹部)
番組が伝えていたのは、人事権を握る行政のトップが自分の考えを押しつけるばかりで異論を許さない恐怖政治だ。周辺にいる職員たちにとっては「恐怖」でしかなかったという実態。これが現代日本の出来事なのかと思わず、背筋が寒くなってしまう。