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「知り合いの職員でも“もう辞めたい”という声も」

 この日のTBSの朝の情報番組「THE TIME,」では、現役の兵庫県職員の話として今回のSNSを使った選挙戦略について「SNSを駆使するやり方は構わないですが、伝える中身の問題ですよね。人のプライベートを晒す。あるいは嘘を言う。個人的には残念だと思います。知り合いの職員でも“もう辞めたい”という声も聞こえてきます」と失望の色を濃くしていた。

(TBS「THE TIME,」11月18日放送より)

 さらに再選後、選挙戦略にかかわったと自らネット上に公表したPR会社の女性社長の行為が「公職選挙法違反」になるのかどうかが、選挙後にわかに焦点となった。12月2日、大学教授と弁護士が斎藤氏とPR会社社長を警察と検察に公職選挙法上の「買収」の疑いで刑事告発したことを発表。一方で告発状が受理されて捜査が進んだとしても、実際に裁判で決着がつくまでは3~4年はかかるという見方は根強い(同日のフジテレビ「イット!」)。万一、裁判で有罪になった場合でも斎藤氏は4年の任期を全うできる可能性があるという。

斎藤県政での「もの言えぬ空気」

 10月2日に放送された「クローズアップ現代」では、「もの言えぬ空気」が第一次斎藤県政では職場に蔓延していたとして、その実態を詳しく伝えている。

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(NHK「クローズアップ現代」10月2日放送より)
(NHK「クローズアップ現代」10月2日放送より)

 第一次斎藤県政では、就任1年で58の事業の廃止や見直しのほか、当時700億円かかるとされた庁舎などの再整備計画の凍結や県立大学の段階的な完全無償化を実施した。

 知事が改革の司令塔として作ったのが、10人程度の幹部ら職員で構成される「新県政推進室」だった。以前は知事と各部局が個別に議論を重ねていた政策形成のプロセスを簡素化。迅速な意思決定を行えるようにした。その後、この「新県政推進室」も形式化し、“側近”と呼ばれる少数のメンバーで物事を決めていくようになったという。

「密室で取り巻きだけで決めて、どんどん進めていく」(OB職員=幹部)

「異論とか、多様な意見を別に求めているわけじゃない」(現役職員)

 このことが“組織の健全さを欠く事態”を招くことになった、と複数の職員が取材に明かしたという。

「敵か味方か。賛成か反対か。白黒をはっきりさせて、賛成のチームと反対に回るチームを分ける傾向があった。そうすると、いろんな意見がだんだん言いにくくなって声が届かなくなる」(OB職員=部長級)

(NHK「クローズアップ現代」10月2日放送より)

 さらに人事権をちらつかされて圧力を感じたという職員もいたという。

 知事が打ち出した賛否が分かれる政策に意見を述べたOB職員は、後日、県幹部から「斎藤県政に刃向かうんだったら辞表を書け。さもなくば服従しろ」と迫られた。

 異論を言うと排除。異動させられてしまう。自然に知事の周囲にはイエスマンしかいなくなってしまう。知事は“裸の王様”のような立場になってしまったとOB職員(幹部)は証言した。こうしたことで職員たちは知事の言動に違和感があっても次第に声を上げられない状態に陥っていた。