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新たな神格化事業に着手

 同時に、北朝鮮は、金正恩氏が2024年1月に40歳になったことを契機に、新たな神格化事業に着手した。朝鮮中央通信は2024年5月、正恩氏の肖像画が党中央幹部学校で掲示されている様子を報道。同年6月には正恩氏が描かれたバッジを着用した幹部たちの姿も伝えた。

 だが、こうした政策は人々の反発を買う可能性が極めて高い。貧困にあえぐ北朝鮮で、「統一は生活苦から逃れる最後の手段」と考えている人が多いからだ。自由を奪われることへの反発もある。韓国政府は、2023年に韓国入りした脱北者が、前年の3倍にあたる196人だと説明。うち、半数を超える99人は20~30代という。

 北朝鮮は建国以来、民主的な選挙をしてこなかった。権力核心層の忠誠心は強いが、一般市民の支持はほとんどなく、不満がガスのように充満している。かつてコンドリーザ・ライス元米国務長官は「ルーマニアのチャウシェスク政権は強固な権力を誇ったのに、演説の途中で一人の女性が『チャウシェスクはウソつきだ』と叫んだ瞬間にすべてが変わった」と語った。2025年の北朝鮮にも同じ瞬間がやってくるかもしれない。

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◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2025年の論点100』に掲載されています。