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カジュアルの地位向上で価値観が一変した

大草 ユニクロが起こした革命って「ライフウェア」を世に浸透させたことだと思うのね。10年くらい前から“生活に即した服”、“人生をクリエイトする服”と打ち出して。「ライフウェア=どこへでも行けるファッション」によって、日本を、世界を席巻した。

 価格と価値のバランスがめちゃくちゃいいし、店舗の作り方も上手で、郊外型かつパーキングがあって幹線道路に位置している。それこそ、実は全て“ライフ”なんです。「いかに生活に根差す」か。

大草直子さん

スー 今はカジュアルが非常に貴ばれるというか、「カジュアルを着こなすことが真のおしゃれ」になっているよね。前にラジオで「今日は何を着ていますか」というテーマでメールを募ったら、やたら「ユニクロの」って書いてあるんですよ。多分ちょっとおしゃれな意味で使っている。

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大草 あえて言うってことはね。

スー そう。「ユニクロの」は、「そんなにファッションを意識してませんけど、ひどい格好もしてませんよ」を表す現代の枕詞なんだなって。「たらちねの」と一緒。かつては「いやいや、ユニクロよー」って自嘲として使っていたはずなのに。

 それが変わったのは大草さんをはじめとした、オシャレな人たちが着ているというのも大きいと思う。それなら大丈夫、という承認になるわけ。ブランディングが巧みだよね。

好きなものを「知性」で着こなす

スー そういう時代を経て、今何を着ればいいのかわからない中年に、大草さんはどんなアドバイスをするんですか。

大草 よく「似合うものと好きなものがかけ離れてきて」って相談されるんだけど、さっきも言った通り、そこは好きなものを着ればいいと思うの。

 まさに昨日、取材で会った方に「何がお好きなんですか?」と訊いたら「あ、丸襟の白いブラウスが好きでした。この年になると着れませんけど……」とおっしゃるのね。「なら、黒いタートルを下にかませればいいんですよ」って。

 

スー ああ、首のスジが気になっちゃうからね。

大草 そう。「無垢な白いブラウスに黒いタートルを合わせて、ジャケットを上から重ねれば、甘辛でいいじゃないですか」って。それが着こなしであり、スタイリング、あしらい方なんですよね。

スー それはね、知性やねん。自分というトルソーに合う着こなしを探す力があるかどうか。そういう力って、どうすれば鍛えられるのかな。

大草 服を着れば着た分だけ、絶対に上手くなります。この時代、ネットショップも活用すればいいと思うけど、実店舗で買うなら5着、6着と袖を通してみてほしい。確実に発見がありますから。私は10分でもあったら絶対どこかのお店に入りますね。駅ビルでも何でも、安いブランドだろうと必ず見る。そして何だったら買っちゃう(笑)。