もう「おばさん」に“あがらなくていい”、どんなファッションだって正解だ――。そんなポジティブな言葉が飛び交う令和の現在。でもそれって本当? それだけでは割り切れない中年のファッションをめぐるモヤモヤを、ジェーン・スーさんと大草直子さんに語っていただきました。

 現在発売中の『週刊文春WOMAN創刊6周年記念号』より、一部を編集の上、紹介します。

(左から)大草直子さんとジェーン・スーさん

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なぜ何を着ればいいのか分からなくなるのか

スー 私は「おばさん」といわれる年齢になってから、友達と「この恰好、大丈夫?」って言い合うようになりました。「イケてる?」とかいう次元じゃないの。社会的に外れちゃいけない大きな輪の中にちゃんととどまっているか、確認し合っている。

大草 オシャレに他者の目は絶対に介在するし、必要だから、すごくわかる。でも、同時に、本当にちょこっとお腹を出した服を着ているだけで揶揄されたりするのはどうなんでしょう。未だに「年齢相応の品位あるファッションをすべき」という価値観が根強くて、窮屈だなとも思います。

スー 「みっともないからやめなさい」って? 誰に言われるの。

大草 それが子どもとか、下の世代からなの。親やうちのユーザーさんは何も言わないんだけど。

スー そうかあ。中年の服の悩みは二つあると思ってて。一つは体型が変わったり、オシャレの情報が分からなくなったりっていう、自分にまつわる話。もう一つは、お腹を出すと子どもにツッコまれるというような、社会的役割との兼ね合いの話。

 子供が巣立ったり、離婚したりして、役割が外れて「個」に戻るタイミングで、何を着ればいいかわからなくなるケースも多いと思う。

ジェーン・スーさん

大草 職業柄、中年の女性から「何を着たらいいのか」ってよく訊かれるので、「お好きなものは何ですか」って訊き返すんだけど、実はそれがわからないって人、すごく多いです。

スー 結婚して子育てをしていると、「他者の欲求を叶える」役割を社会からリクエストされるからね。夫の好物も子どもの嫌いなものもわかるけど、自分の食べたいものはわからない。「私」について考える時間がないんですよ。

大草 そういうことだね。主語がHeやShe、theyになって、Iじゃなくなっちゃう。

スー あとは、ここ15年くらいでいちばんの問題は「ユニクロ現象」。背景には日本経済の停滞があるけど、小学生から高齢者まで、誰もが同じ服を着ている。それを象徴するのがユニクロ。

 昔は「20代ではこれを着て、40代になったらこの鞄を持つ」みたいな暗黙の了解があったじゃない。でもそれが崩れちゃった。だから、私たちはかなり新しいところからまた中年のファッションやメイクを考えないといけないなとは思ってます。