カリスマ緊縛師としてその名を轟かせている鵺神蓮(やがみ・れん)さん(40)。近年、緊縛が日本の“文化”として世界的な注目を集めており、鵺神さんもグローバルな活躍を見せている。

 とはいえ、世間的には緊縛が身近な存在とは言い難い。いったい「緊縛」とは何なのか。彼は緊縛師として、どのような仕事をしているのか。どんな人が彼のもとに縛られに来るのか。鵺神さんに話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

プロ縛師の鵺神蓮さん ©山元茂樹/文藝春秋

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もともと「緊縛」は敵を捕らえる方法として生まれたが…

――まずは「緊縛」について教えてください。

鵺神蓮さん(以下、鵺神) 「緊縛」のルーツは捕縛術(ほばくじゅつ)です。日本には、いろいろな流派の武術があるのですが、それのオプション的な要素で、効率的に敵を捕らえる方法として江戸時代に生まれたと言われています。

 それがいつからか、性的な行為をするときにも使われるようになったんです。春画とかにも、そういう雰囲気の絵があるじゃないですか。明治時代になると江戸川乱歩の小説にもそういったシーンが出てきますし、画家の伊藤晴雨の作品には『責め絵』というのもあります。

――鵺神さんが編み出した「責縛」は、普通の緊縛とは何が違うのでしょう。

鵺神 緊縛の中に「責め縄」というのがあるんですよ。責めは「相手に肉体的、精神的な苦痛を与え、責めること」を意味するのですが、それを「縄」を使って行うのが「責め縄」です。

 でも私は、「縄以外のものを使ってはいけないのだろうか?」「痛くて苦しいだけではなくて、気持ち良いを追求することはできないのか?」と疑問に思ったんです。

 で、自分なりに考えた結果、別に縄にとらわれず、手を握ってもいいし、言葉を使ってもいいんじゃないかと思って。

 

縄にとらわれず、体の使い方を重視するのが「鵺神スタイル」

――縄にとらわれた方法ではないと。

鵺神 要は「コミュニケーションを取りながら相手の自由を制限する」のが責めであり、縛りなのではないかと。それで、「縄」という言葉を使わずに「責縛」という言い方をするようになりました。

 それが新しいもの好きの海外の人に注目されて、流行ったんですよね。ただ、今はあまり「責縛」という言葉も使ってなくて。あくまで「鵺神スタイル」のひとつという位置づけです。