縛られに来たお客さんに恋愛感情を持たれてしまうことも…
――性的な快感は得られるけど、それで幸せになれるわけじゃないと。
鵺神 自分がどんなストレスを抱えていて、自分の生活には何が足りていないのか。それがわからないまま「縛られたら何かひらけるんじゃないか」と期待して来ていただいても、一過性の快感になってしまう。
そのまま日常生活に戻っても、何かが変わったわけではないから、またすぐに縛られに来てしまうんです。
――お客さんに恋愛感情を持たれてしまうこともあるのでは?
鵺神 そういう方もいると思います。ただ、お客さんには「愛と信頼は置いてきてください」と伝えています。
――それはどういう意味でしょうか。
鵺神 信頼関係や愛情がないと縛れない、なんてことはないんです。例えば、医者は患者さんに対して好意を持ってなくても、治療できますよね?
それと同じです。縛る・縛られるという行為に感情はいらない。私が提供しているのは“技術”だけなので。だから、もしお客さんから好意を寄せられても、こちらがそれに応えることはありません。
世界的に有名な緊縛モデルから突然DMが来て…
――鵺神さんに縛られに来る人は、月にどれくらいいるのですか?
鵺神 具体的な数字はわからないですが、ある程度先まで予約は埋まってます。海外にも行っているけど、日本での活動のほうが忙しいですね。
――海外で活動を始めたきっかけは。
鵺神 Facebookがきっかけで、海外ツアーをやってからですね。ある日突然、フランス人の女性から「海外ツアーに興味はないか」というDMが届いたんです。
最初はどうせ嘘だろうと思って、テキトーに返事をしていたんですけど、彼女のプロフィールを見に行ってみたら、ヘッダー写真にうちの業界のドンが映っていて。「……あ、これは本物だ」と。
――その女性は何者だったのですか。
鵺神 世界的に有名な緊縛モデルだったんです。彼女はモデルとしての実績もあり、日本の緊縛についても知り尽くしていて信頼できると思いました。だから彼女の提案に乗っかって、海外ツアーをさせてもらいました。
――今では海外に支部もあるそうですね。
鵺神 ブルガリア、スペイン、ベルギー、ドイツ、香港、韓国、オーストラリアに支部道場があります。
――ヨーロッパが多い。
鵺神 縛りの文化やコミュニティは、ヨーロッパが進んでいるんです。アメリカに比べたら10年くらい進んでいるんじゃないかな。