これを踏まえて、悩める親に私が提案したいのは、全国大会に出場するなど短期的な結果のみでその指導が適切かどうかを判断するのではなく、人生という長いスパンでその効果をみることである。子供が次のステージに進んだとき、あるいは引退後のセカンドキャリアを見据えて、その指導の教育的効果を考えてもらいたい。
本当に夢中でスポーツを楽しんでいるか
さらにもう一つ提案したいのが、厳しいかそうでないかではなく、夢中になれているかどうかをみることだ。
そのスポーツに子供がどれだけ没頭しているかに注目してほしい。休日であっても近くの公園に行って自主的に練習に取り組む、一緒にプレーしようと声をかけてくる、あるいは家の中でもずっとボールを離さないとか、隙あらばどうにかしてプレーしようとするといった態度を観察するのである。
もちろんこうした状態が途切れることもあって、思い通りにプレーができないとか、以前できていたのにうまくできなくなったとか、あるいは仲間と口喧嘩をして練習に足が向かないとか、意欲が減退する時期は訪れる。こうしたスランプは、心身の成長がめざましい子供には必然的に、また定期的に訪れる。うまくプレーできないという悩みは、うまくプレーしてやろうという意図があるから生まれるわけで、つまりは夢中になれていることの証左である。
この「うまくプレーしてやろう」という意図には、怒られるからうまくプレーしなければならないときの焦燥感や悲壮感がない。真剣に取り組むときに訪れるつまずきを乗り越えようとするときに感じる「結果的な厳しさ」が、「胆力」を育むのである。
「鬼になるまい」と抵抗している子供の特徴
夢中になっているかどうかは、子供の表情に表れる。目も虚ろで、顔がこわばるなど深刻さが読み取れるならば、それは子供自身が「鬼」になることを全身で拒否しているとみていい。
そのときは、チームメイトの親同士で話をして連帯を図るか、然るべき窓口に相談して指導者およびチームに物申すべきで、もし物申しても話が噛み合わないのであれば辞めるという選択も視野に入れるべきである。