有毒物質を体内に入れて18日が経過
「砂糖の入っていない緑茶で、すでに冷えていました。三、四回、口をつけたかもしれません。冷えていたので全部は飲みませんでした。底にはまだお茶が残っていました」
「あなたがバーに入ったとき、お茶はすでにそこにあったんですね」
「はい」
「新しいカップが運ばれてきたんですね」
「はい」
「アンドレイはあなたの前で、そのお茶を飲みましたか」
「いいえ」
警察はルゴボイたちがお茶を飲むよう強制したのかどうかを確認する。
「アンドレイはどの程度、あなたに飲むよう勧めたのですか。彼はさほど(熱心)でもなかったのですか。それとも、飲め、飲めと言ったのですか」
「彼は言いました。『もしも飲みたかったら、注文してもいいよ。でも、私たちはもう出ますよ。お茶なら、ここに少し残っている。これを飲めるよ』と」
「あなたがポットから飲んだ後、アンドレイたちはそのポットから飲みましたか」
「いや、絶対に飲んでいない」
リトビネンコはこう強調した。
聴取は1時間を超えた。リトビネンコの疲れが目立ってきた。問いと答えがかみ合わず、通訳を困惑させる。やりとりはロシア語である。英語力の問題ではない。彼の思考力は落ちていた。通訳はこんな風に問うている。
「ちょっと待ってください。ちゃんと理解していますか」
午後6時半に聴取はいったん、停止される。リトビネンコが「口をゆすぎたいので、5分ほど休憩を入れてもいいですか」と言ったからだ。
隣の部屋に待機していたマリーナは休憩のたび、夫に呼ばれて世話をした。夫の髪は完全に抜けている。有毒物質を体内に入れて18日が経過していた。リトビネンコの生命のタイマーは赤いランプがともり始めた。
この日の聴取が終わったのは午後8時5分だった。