鉄製の重しが繋がれた遺体
港湾地区にある埠頭のそばを歩いていた貯木場の作業員は、眼下の海面に浮かぶ、マネキンのような足先があることに気づいた。目を凝らして見ると、それはマネキンではなく、ピンと伸ばした人間のつま先だった――。
2003年6月20日午後2時25分頃、「人の足のようなものが浮いている」との通報が福岡県警に入った。
現場は福岡市東区にある箱崎埠頭。駆けつけた警察官が、頭を下に、足先だけが水面に出た全裸の女性の遺体であることを確認。地上に引き揚げたところ、遺体の右手首には手錠がかけられ、その片方には重さ30.45kgの、箱型鉄製重しが繋がれていた。
遺体の身元はすぐに福岡市に住むBさん(40)であると判明する。詳しくは後述するが、遺体が発見された当日の午前8時半頃、Bさんの父親がBさんとその夫、2人の子供を含む家族4人の捜索願を所轄の東署に出していたのだ。
そのことから、福岡県警は水中を捜索する機動隊のアクアラング隊を投入。午後6時15分までの間に、まずは手錠とダンベルに繋がれた夫のAさん(41)と娘のDちゃん(8)、最後に手錠とダンベルに繋がれた息子のCくん(11)を水中で発見したのだった。
彼らの遺体は直ちに東署へ運ばれ、検視が行われた。
いずれの遺体も事件性が疑われ
身長157cmのBさんの遺体は首にネックレスだけをつけた全裸で、顔面にはうっ血があり、左右の頬に表皮剥脱と皮膚の変色があるが、首に絞めた痕は認められなかった。
身長174cmのAさんの左手は手錠で重さ9kgのダンベルと繋がれ、そのダンベルには、身長126cmのDちゃんの左足首にかけられた手錠も繋がれている。
Aさんは灰色の半そでTシャツと黒色のウインドブレーカーズボンという姿で、首には紐状になった透明の粘着テープが巻かれていた。両膝はコートの腰紐で、両足首はベルトでそれぞれ緊縛されており、胸部には電気コードが2周巻かれ、その一端は後ろ手にされた右手首に、もう一端は手錠がされた左手首に巻き付けられた状態だった。
一方のDちゃんは水色の半そでTシャツに赤色の柄物パジャマズボン姿。顔面にはうっ血と左前頭部に表皮剥脱がある。首のまわりには、ほぼ半周する長さで表皮剥脱を伴う絞め痕が残っていた。
身長159cmのCくんは白色半そでTシャツに灰色の半ズボンという姿。顔面にはうっ血があり、顔の左側には表皮剥脱と腫脹を伴う皮膚の変色が見られた。
捜査員による検視の結果、いずれの遺体も事件性が疑われたことから、その日の夜には、司法解剖に回されることになった。