司法解剖で判明した死因は
福岡市内にある大学で、20日午後10時45分から、翌21日午後4時まで行われた司法解剖では、それぞれの死因について、以下の結果が出ている。
〔Bさん〕入浴中に襲われて、扼頸(手で首を絞められる)による頸部圧迫と、浴槽に水没させられたことによる淡水溺水による窒息死。
〔Aさん〕絞頸(手以外のもので首を絞められる)によって窒息状態に陥り、死亡前に海中に投棄されて溺死したもの。
〔Dちゃん〕絞頸による窒息死。
〔Cくん〕扼頸による窒息死。
これらの司法解剖の結果を待つまでもなく、Aさん家族4人の捜索願が出された時点で、彼らが行方不明になっていることについて事件性が疑われていた。
自宅から離れた私立の学校に通うCくんとDちゃんを車で送るため、母親であるBさんの父親、つまり子供たちにとっては「おじいちゃん」である祖父のEさんが、毎朝A家にやってくるのが習慣となっていたのだ。
その日、6月20日の午前6時25分頃にも、Eさんは普段通り、近くに住むA家を訪ねている。しかし、いつもと違って家に家族4人の姿がない。Eさんは心当たりを探してみたが、彼らの所在は判らないままだ。
室内に土足で侵入した痕跡
前日の夜、Bさんが子供2人を連れて実家にやって来ており、Eさん夫婦と一緒に夕食を食べていた。その際に普段と変わったところは見受けられなかった。そうしたことから、家族が揃って家を出ることは考えられない。
家の中を見てまわったEさんは、数カ所に血痕があることに気づく。もしかしたらなにかの事件に巻き込まれたのではないかとの思いが生じ、午前8時20分頃に、所轄の東署に届け出たのである。
Eさんから事情を聴いた東署は県警本部の捜査一課に即報。それを受けて、捜査員と鑑識課員が、A家に臨場したのだった。
その結果、玄関と1階の8畳仏間のガラス窓が無施錠で、室内に何者かが土足で侵入した痕跡があることがわかる。
また、玄関の土間と2階の廊下、子供部屋の2段ベッドの枕などに血痕が付着しており、浴室に入るための戸のガラスが1枚割れて木枠のみとなっていた。
こうしたことなどから、「事件性あり」として、捜査はすでに始まっていたのだ。その矢先の遺体発見であり、前述の通りの司法解剖の結果である。現場や遺体の状況を総合的に判断して、複数犯による殺人死体遺棄事件とみられたことから、東署に「東区における一家4名殺人・死体遺棄事件」捜査本部が設置されたのだった。
なお、ここまでに書き連ねてきた事件発覚の詳細については、私を含めた捜査関係者以外の者が、発生時には知る由もなかったことであり、後に取材を重ねたことで、明らかになったものであることをお断りしておく。