高断熱住宅普及率が高い北海道や東北地方で冬季死亡増加率が低く、高断熱住宅普及率と冬季死亡増加率の間に密接な関係があることがおわかりいただけると思います。
ちなみに、すべての先進国において、現在は冬の死亡率のほうが高いそうです。ただ、冬季死亡率がこんなに高いのは、先進国では地中海沿岸の温暖な気候の数カ国と日本くらいで、他の国では、これほど顕著に冬の死亡率が高いわけではないそうです。どうやら諸外国においても同様の傾向があるようです。
なぜ暖房をつけているのに足元が寒いのか?
これらのデータを見ていただくと、消費者庁が唱える上記の5つ対策は、もちろん意味はありますが、抜本的な解決策ではないことがおわかりいただけると思います。
抜本的な解決策は、家の中の室温差をなくす高気密・高断熱化なのです。できれば、多くの方々に、家を建て直す、もしくは断熱フルリノベーションを行い、欧米並みの高性能住宅に住んでいただきたいところです。とはいえ、そのためには多額の費用がかかりますから、それが可能な方は限られると思います。
そこで、リーズナブルにある程度、ヒートショックリスクを低減する簡易的な断熱リノベについて、ご説明します。
家の断熱性能を決める最も重要な要素は、窓の性能です。図表5に示すとおり、冬の暖房が発する熱エネルギーのうち、50%は窓から流出します。また、窓の断熱性能が低いと、軽くなって上昇した暖気が冷たい窓に触れて重くなり、足下に下りてきます。この現象をコールドドラフト(図表6)といいます。
フルリノベが無理なら「窓の性能」を高めよう
併せて、気密性能が低い家では、暖気が天井や屋根から逃げ、その分、床下等から冷たい隙間風が入ってきます。これらが日本の住宅の足下が寒い最大の要因です。窓の性能を高めるだけで、十分とは言えませんが、家の寒さはかなり改善されます。
国は、地球温暖化対策という観点から、既存住宅の高断熱化に力を入れています。その一環として、「先進的窓リノベ事業」という窓や玄関ドアの断熱リノベに非常に高い補助率の補助制度があります。この制度は、窓の大きさや断熱性能による定額補助のため、補助率が何%なのかは一概には言えないのですが、当社が提携しているリフォーム会社の試算では、50~60%程度の非常に高い補助率になるようです。