「月一で美咲に会わせるって言うんですよ。それを私は鵜呑みにしてしまいました」
月1回でも会えるのなら、朋美と娘の生活状況を知ることができる。体に虐待の形跡があれば、改めて親権者変更の申し立てをすればいい――康祐は悔しさを滲ませながら親権を放棄し実家に帰ったときの経緯を語った。
約束は当然のように破られた。端からそのつもりだったのか、朋美は離婚調停を済ませるとすぐに娘を連れて居を移した。
事実、娘に会えたのは、離婚調停中に持ち出すのを忘れていた私物を取りに帰ったとき一度だけで、その後は移転先すら知らせてもらっていない。
娘との最後のふれあい
「2009年3月22日のことです。当時2歳の美咲から遊ぼう、遊ぼう、って言われて、“高い高い”をしてあげて……」
これが娘との最後になるなんて。過去を振り返り大きく息をついた康祐は、やりきれぬ思いでいる。
そのとき撮ったという写真を見ると、疲れ切って、でも、どこか嬉しそうに目を閉じる美咲さんの寝顔がまず目に入る。もう二度と会えないかもしれない。そんな予感がして、咄嗟にシャッターボタンを押したのだという。康祐にとっても、美咲さんにとっても幸せな時間だったのでは、と想像する。
約束を反故にする兆候がまったくなかったわけではなかった。直後に朋美は、こんな捨て台詞を吐いて康祐を家から追い出していたからだ。
「この子は学習院に入れます。立派に育ててみせます」
康祐は統合失調症と戦いながらも、愛娘の身を案じ続けた。行動にも移し、探偵まで雇い移転先を突き止めようとする日々だった。
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