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「愛着障害」とは?
愛着障害とは、乳幼少期に何らかの原因により、両親との愛着形成がうまくいかず問題を抱えている状態のことをいう。パーソナリティ障害や発達障害を抱えた若者の治療に、長年にわたって関わってきた精神科医の岡田尊司は、著書『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』(光文社新書)のなかで、うつや不安障害、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症、境界性パーソナリティ障害や拒食症といった現代社会を特徴づける精神的なトラブルの多くにおいて、愛着障害はその要因やリスク・ファクターになっているばかりか、離婚や家庭の崩壊、虐待やネグレクト、結婚や子供をもつことの回避、社会に出ることへの拒否、非行や犯罪といった様々な問題の背景の重要なファクターとしてもクローズアップしている。
美咲さんも美咲さんで生きづらさを抱えながら生きていた根が見えた気がした。やはり、あのとき親権を放棄したのが間違いだったと、悔しさを重ねる康祐がいた。
2016年の春ごろ、児童保育院の職員の男が県青少年健全育成条例違反容疑で逮捕されるという事件が起きた。施設の児童に対してワイセツ行為を働いたのである。
これ自体はよくあることかもしれない。だが、何がどう転ぶかはわからない。
実は、このワイセツ事件が、朋美を犯行へと向かわせた。