初めて声を掛けていただいた時は嬉しかった。ツーショット写真も撮っていただいた。NHKの『あさイチ』金曜プレミアムトークに出演した時に有働由美子アナウンサーが、その時二人で撮った写真を紹介してくれた。長嶋さんはこういう類のプライベート写真は公になさらないらしいが、有働さんを信用されていたのだろう。快諾していただいたとのこと。
長嶋さんは倒れて2年弱で東京ドームに姿を見せられたと聞いていた。私も倒れて2年が経つ前に『あさイチ』に出て、この身体をテレビを通して全国に世間に晒(さら)した。収録後に有働さんが朝早かったからねとくださったオニギリの美味しさは忘れない。
井ノ原さんと有働さんのリードで初めて病気のこと、リハビリのことを一時間ぐらい話せた。長嶋さんがリハビリということを通して私に大きな世界を見せてくださったから、テレビの生番組で話すことができたのだろう。
その後もずっと週1回、病院で長嶋さんに逢えることにワクワクしていた。長嶋さんにとってはリハビリという感じではなく、もはやトレーニングの域である。私は少し早めに行ってその様子を拝見した。そして、長嶋さんは終わった後、帰りがけにいつも声を掛けてくださった。ずっと勝負の世界で闘ってこられた、ミスターだけが持つ優しさと微笑み。
駄目だしの「イチ、ニイ、サン!」
ある日のこと、私はほんの少し弱音を吐いてしまった。
「シオミさん、これも人生だよ……」
長嶋さんに静かにそう返され、言われた時は堪(こら)えきれずに泣いてしまった。
すると、そんな私を館内に響きわたる大声で励ましてくださった。
「ガンバレ! ガンバレ! ガンバレ!」
私の胸の内に熱いものがいっぱいに溢れた。
ある映画が完成して、長嶋さんは公開前の試写会での私の姿をテレビのニュースか何かでご覧になったのだろうか。私の立ち姿についてこう聞かれた。
「シオミさん、あれは何分くらい立ってないといけなかったの?」
「うーん10分ぐらいです」