1977年にはカネボウ化粧品のキャンペーンガールに抜擢され、ヒットCM「Oh!クッキーフェイス」に出演した。こんがりと日焼けした小麦色の肌。
夏目は抜群のスタイルのボディーを、極小ビキニで惜しげもなく披露した。「夏目」の芸名は、このCMが夏をイメージするものだったことから生まれたという。たしかに、あの笑顔は、ヒマワリが咲く夏がよく似合う。
海に浮かべたフロートに寝そべったり、ビキニ姿でラクダに乗ったりする彼女の姿は衝撃的だった。当時の夏目は19歳。このときのCMディレクターが、後に夫となる伊集院静(1950-2023)だったという。
丸刈り姿も美しい三蔵法師で人気者に
翌1978年には、ドラマ「西遊記」(日本テレビ)で丸刈り姿も美しい三蔵法師を演じ、お茶の間の人気者になる。本来は男性である三蔵法師を、女性の夏目が演じたことが話題を呼んだ。高貴で中性的な三蔵法師の誕生である。夏目の起用は大成功。ドラマは大ヒットである。夏目の知名度が一気に全国区にアップしたことは間違いない。
そのころ筆者は、小説家・横溝正史(1902-1981)原作のサスペンスドラマシリーズ(TBS系/毎日放送制作)を毎週のように見ており、「悪魔の手毬唄」で夏目がヒロインを演じたのをよく覚えている。ドロドロとした血なまぐさい連続殺人事件が中国地方の山深い里で起きたのだが、夏目が登場したことでドラマに爽やかな風が吹き込んだように思えた(もちろん彼女は犯人ではない)。
「なめたらいかんぜよ!」と夏目が啖呵を切った映画「鬼龍院花子の生涯」(1982年)も懐かしい。彼女は同作でブルーリボン賞の主演女優賞を受賞。土佐弁のこのセリフを、あのころはみんながマネした。
筆者は、夏目の死の前年に公開された遺作映画「瀬戸内少年野球団」(1984年)を推したい。原作は作詞家・阿久悠(1937-2007)の自伝的小説だ。敗戦直後の兵庫県・淡路島を舞台に、野球を通じて児童らの心を支えようとする夏目扮する小学校教師・中井駒子と、彼女を取り巻く人々の物語である。
撮影の合間の1984年4月6日、こんなことがあった。
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