1月10日、午後7時45分頃。職場から帰宅しシャワーを済ませたホールさんは、何気なくスマホを確認。するとスマホの画面には、1時間半ほど前に近隣のイートン渓谷で発生した火災に関する着信とメッセージが大量に届いていた。
パニックになりそうな心境を必死に隠しながら、ホールさんは12歳の娘・ジェイドさんと、近隣に住む高齢の親戚を説得。早期の避難を決行する。
いざ車に乗り家を脱出すると、周囲の状況は想像を超えていた。強風で倒れたフェンスや木製の門が、車の進路を遮る。停電で真っ暗な中、煙が充満した街とオレンジ色に染まる空が恐怖感を掻き立てた。
「どこを見ても火の海で、何もかもが見分けがつかなかった」とホールさんは語る。「信号は消えていたし、ビジネス街に明かりはなく、ガソリンスタンドは閉鎖されており、すべてが真っ暗闇でした。誰も交通ルールを守らず、パニック状態で逃げていました」
「熱を肌で感じた」渋滞に巻き込まれた男性の5m先に炎
ホールさんは避難を急ぐが、警察が張った規制線や渋滞のせいで、ふだん使う主要道には出ることすら叶わない。見知らぬ道を縫うように40分ほど走行し、這々の体で危険なエリアを脱出。ホールさんが振り返ると、山から下りようとする長い車列が織り成すヘッドライトの帯と、消火活動を行うヘリコプターの姿が見えたという。
住み慣れた我が家を早期に後にした彼女の決断は、一家の命を救った。同じ地域では、家に留まることを選んだ3人の住民が犠牲に。そのうち1人は、庭のホースを握ったまま発見された。最期までホースを握り、火の手に囲まれながら死闘を演じたのだろう。ホールさん一家は家と財産を失ったものの、一族全員が無事に避難できたという。
一方、車のない人々のなかには、見知らぬ人に命を救われたケースもある。ロサンゼルス近郊のパリセイズ火災から生き延びたアーロン・サムソンさんと83歳の義父は、必死の避難の様子をCBSニュースに語る。