不気味な風鈴の音で始まった…次々と襲った異常事態
ニューヨーク・マガジンのライターであるケリー・ハウリー氏は同誌に、一家で避難した状況を詳細に明かしている。
一家は高級住宅地・シルバーレイクに家を購入。4人家族には手狭な2ベッドルームの家だったが、芸術家が集うアートな住環境と遠くの山々を見渡す眺望に惹かれ、かなり背伸びをして購入したという。
悪夢は1月6日の真夜中、強風に揺られる風鈴の音で始まった。翌朝にはヤシの木が風で大きく揺れ、サボテンが震え、竹がむやみに揺れ動いたという。学校では異例の「雨天時の措置」が実施され、子供たちは屋内待機となった。ハウリー氏の記憶にある限りこの地では、学校のある日に雨が降ったことはない。雨天時の措置の実施自体が、異例の対応だった。
7日のうちに、風は屋根のかわらを剥がし始め、何かが家に当たる音が断続的に響いた。夜になると、山の背後にオレンジ色の光が現れ、30マイル(約50キロメートル)ほど先で火の手が上がったという。
8日午前5時、不気味な風の音が響く中、煙の臭いで目が覚めた5歳の娘は、窓から見える異様な光景に怯えた。黒い雲に覆われた谷は炎に照らされ、コントラストの強い異常な風景となって木々を浮かび上がらせる。
黒煙が立ち込める中でハウリー氏は、喘息持ちの5歳児のためにと避難を決断。パスポートや出生証明書、医薬品に、不完全ながら残していた子供たちの育児アルバムを鞄に詰め込むところまでは早かった。だが、衣類や祖母の食器、子供たちの大切なおもちゃなど、思い出の品の取捨選択に悩む。その間にも、息子のクラスメートの家がまさに焼け落ちてゆく。
苦渋の決断を迫られ、必死で避難を敢行したハウリー氏。彼女は、「私は無事でよかった」と人々は言い合うものの、「家と全ての持ち物が消滅してしまった人は、本当に『無事』と言えるのでしょうか」と問いかけている。