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緊急通報の911やライドシェアのウーバーも頼りにならなかったというサムソンさんたちは、ジェフと名乗る近所の住人の車に拾われた。だが、車に乗せてもらっての避難途中、事態は急変する。

「道路の両側で火災が発生していました」と語るサムソンさん。「車は渋滞で身動きが取れず、そうしている間にも、火はどんどんと近づいてきます。車の右側では、火が15フィート(約4.6メートル)の距離まで迫りました」。彼は、「熱を肌で感じました」と恐怖の瞬間を振り返る。

そこへ警察が現れ、車から降りるよう叫んで周知したという。サムソンさんはパーキンソン病でほとんど動けない義父と共に車から降り、励まし続けた。「頑張れ、お義父さん。下り坂を歩いていこう。私たちならできるよ」。歩行器を使い、ようやく安全な場所へ逃げ延びることができたという。

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放置車両で混乱の避難路、ブルドーザーが活路拓く

平時から交通渋滞が深刻なロサンゼルスで、避難においても渋滞が障害となっている。全米日刊紙のUSAトゥデイは、渋滞都市として知られるロサンゼルスでさえ、今回の避難における交通混乱は異例の事態だと報じている。

状況が最も深刻化しているのが、高級住宅地のパシフィック・パリセーズ地区だ。自動車専門誌の米カー&ドライバーによると、消防当局は当初、避難する住民たちに対し、車を路肩に寄せるか、緊急車両による移動を可能にするため鍵を車内に残すよう要請していた。

しかし、狭く起伏の多い道路が多く、幹線道路へのアクセスが悪いこの地区では、多くの住民が車を放棄して逃げ出さざるを得なくなった。その結果、緊急車両が通行できない状態となり、消防当局は約200台の放置車両をブルドーザーで強制的に移動させる異例の措置を取っている。

現場では赤いキャタピラー社製のブルドーザーが煙の中を進み、パリセーズ・ドライブとサンセット通り付近で高級車を含む放置車両を次々と道路脇に押しのけたという。地元テレビ局のKTLAではリポーターが、「金属がきしむ音からも分かるように、車両は確実に損傷していっています」と現場から中継。「車両の損傷よりも、人命と家屋を守ることが優先です」と添えた。