持ち出し品に選ぶべき「6つのP」
緊急避難時、何を持ち出すべきか? 避難時の基本指針として「6つのP」がある。「家族とペット(People and Pets)、書類(Papers)、処方箋(Prescriptions)、写真(Photos)、パソコン(Personal computer)、クレジットカードなどカード類(Plastic cards)だ。これらは災害時に最低限必要な持ち出し品とされている。
しかし、実際の避難現場では異なる判断が働くことが多い。避難者たちが真っ先に持ち出したのは、家族との思い出の品だった。米ピープル誌が、ロサンゼルスの山火事による避難者たちの実態を報じている。
同誌編集部で避難したメンバーのうち、エリザベス・レナード西海岸支局主任は幼い頃から「ヒム」と名付けて親しんできた古いぬいぐるみと毛布を、ローレンス・イー夜間編集長は母親の思い出の服を、ダニエル・バッハー上級記者は結婚式に夫から渡された手紙を、それぞれ咄嗟に持ち出したという。
レナード氏の息子は、メジャーリーグ・ドジャースのクレイトン・カーショー選手のサイン入り野球ボールや、自身が野球やバスケットボールで獲得したメダルなど、スポーツにまつわる思い出の品々を持ち出した。
ロサンゼルスの高級住宅地・ローレルキャニオンから避難した住人のメルさんは、同誌に対し、「火災の多い地域に住んでいましたので、衣類やコンタクトレンズなどを入れた非常用バッグを用意していました。しかし、いざ隣の尾根に火が見えた時は、価値のあるものは気にならず、大切な人のことだけを考えていました」と語る。
非常時における人々の判断基準は、必ずしも実用的な価値にとらわれないようだ。むしろ、家族との絆や思い出を象徴する品々が、より重要視される傾向にある。
未曾有の大災害で浮かび上がった人間社会の底力
ロサンゼルスの山火事は、アメリカでも近年稀にみる大災害となっている。避難者たちの体験からは、大都市・ロサンゼルスが潜在的に抱えていた災害への脆弱性だけでなく、人間の本質的な強さが浮かび上がった。