北京留学中は食べた料理をひたすらExcelに…

――大学生の頃から、現地で食べたものを記録され続けているとか。

酒徒 好きなことをもっと知りたいという一心で、最初は食べた料理の名前の意味もわからないので、帰ってきてから調べるということで、ノートに手書きで記録していました。

 語学留学で北京に暮らしていたときは、パソコンが普及していたので、食べた料理をひたすらExcelに打ち込んで、中国語の勉強ついでに発音記号をつけて、それが何料理か、さらにひとことメモをつけて、ということをずらーっとやり続けたら、2年もしないうちに5000食になったわけですよ。

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干し海老入りの葱油の和え麺(開洋葱油拌麺) 『中華満腹大航海』(KADOKAWA)より

――5000。

酒徒 さすがに3、4年したら、レストランでふつうに出てくるような料理はだいたい覚えちゃったのでやめましたけど。ただ、Excelをやめたあとも、食べた料理の作り方や由来を調べてブログに書くことを続けていたので、食べたものが食べただけで終わらず、自分の養分というか、知識になっていった部分はあります。

「食べて、調べて、書く」で、三度楽しめる、みたいな。

丸鶏を焼きあげた焼き鳥(烤鶏) 『中華満腹大航海』(KADOKAWA)より

――伝えたいというお気持ちが強いですか?

酒徒 身も蓋もない話なんですけど、僕がなにより重視しているのは自分自身の食欲なので、「本場の中華料理を日本に伝えなければ」といった使命感はぜんぜんないんですよ。せいぜい「この料理むちゃむちゃ旨かったよ! 見てみてー」くらいですね。

 もちろん、どうせ見てもらうんだったら受け止めてもらいやすいものはなんだろうということは考えますけれども、やっぱり初期衝動としては、自分が食べたことがないものへの追求心や食べておいしかったときのよろこびがあって、それがいまも一番の行動原理になっています。

次の記事に続く 「10億人産んでる国だから大丈夫だろうって」プロの料理人のファンも多い大人気中華料理愛好家・酒徒さんが、家族とともに再び中国に住みたい理由