中華料理の多様性に魅了されて約30年。「本場中国の味が伝わるなら」というぶれない意志と、「食べたい、調べたい、書きたい」の長年のリズムで流れるように前進し続ける酒徒さん。
新刊の食紀行『中華満腹大航海』(KADOKAWA)発売を受け、北京、広州、上海と、10年にわたる駐在時代の家族とのエピソードと、趣味の飲酒と健康のこと、これからの活動の展望を伺った。(全2回の2回目/#1を読む)
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妻と中華料理を一緒に食べ歩く
――ご新刊のなかの、2000年代のエピソードに、「連れ(いまの妻です)」という文言がありました。初期の頃からご一緒に?
酒徒さん(以下、酒徒) 知り合ったのは、大学時代に北京へ短期留学したときです。何十年前なんだって話ですけど、向こうも中国語を勉強していまして、その後、10年間の駐在時代もずっと一緒でした。
――すごくいいなあと思ったのは、奥さまも中華料理に愛を持って、好奇心旺盛に一緒に食べ歩かれているご様子が、(食に比べると)少ない描写のなかから伝わってきて。
酒徒 我々を結びつけているのは食への興味、その一点というところがありまして。最初に(ふたりで中国に)行ったばかりのころは、朝・昼・晩すべて中華料理という生活を、それこそ1~2年ずっと続けていたんですけど、ふたりともそれがぜんぜん苦にならないというか、むしろもっと食べようというタイプだったので、今回の本を書けたのも、そういう生活ができる相手がいたからだと思います。
現在8歳の息子の出産は中国で
――息子さんは、現在8歳とのこと。中国で出産されたのでしょうか。
酒徒 はい、前回上海に住んでいたときですね。
――現地でのご出産は大変だったのでは?
酒徒 僕もそう思ったんですけどね。意外と相手(妻)のほうが平気で、別に言葉通じるし大丈夫でしょう、10億人産んでる国なんだし、みたいな。そんなノリでした。
――医師とのやりとりも中国語で?
酒徒 はい、そうですね。すでに現地に長く暮らしていましたので、ふつうの人が想像するような不安やストレスを感じることもなく、ぶじ出産を終えることができました。
――じつは、今回同席している編集者も私も、親の仕事の関係で幼少期に中国に住んでいた時期がありまして。
酒徒 えっ、そうなんですか。それは珍しいですね(うれしそうに)。
――編集者のほうは90年代半ばから北京と上海に、私はもっと前で、80年代後半に。
酒徒 おおおお、その時期ですか。


