パックで売られていない肉の迫力
――私の場合は、日本人学校のない地方都市に住んでいまして、近所にスーパーもなくて、市場でふつうに生きた鶏を買って絞めて料理をするといった環境だったので、家に料理人さんが来てくれていて。
台所で歩いていたすっぽんがスープになって出てくるとか、子どもの経験値として何を食べてもおいしくて、それから好き嫌いがなくなって食べることがすごく好きになって。
酒徒 いま、すごくうらやましいなって思って聞いています。
――時代は違っても、そういう肌感覚がすべて、ご新刊に書かれていて、酒徒さんの中国の食と文化に対する優しさが詰まっているなと思いました。
酒徒 あはは、そうですか。僕も中国の人たちが市場に買い物に行って、生きた食材を買って、自分たちの手で料理をするというところに、パワフルさと食へのエネルギーみたいなものを感じていて。パックで売られていない肉の迫力みたいなものは、いまでも好きですね。
いまは生きた鶏自体を市場で売らない地域も多くなっていますが、広州に住んでいたときは、生きた鶏を捌いて毛をむしるところまではお店の人にやってもらって、丸鶏のまま持って帰って料理していました。
「はしご酒ダイエットで2年で20キロ減」
――あの、20キロ太られたというのは、中国に駐在されていたときですか? 酒徒さんのSNSに「はしご酒ダイエットで2年で20キロ減」とありましたが。
酒徒 太ったのは、2019年に帰国してから、コロナのストレス太りですね。中国にいるときは、あんまり太らないんですよ、逆に。
――あれだけ食べ歩かれて、なぜでしょう。
酒徒 なんででしょうね。日本での中華料理のイメージがチャーハン、餃子、ラーメンなどの一部の料理に偏っているんだと思うんですけど、基本的に中国の人たちはものすごく野菜を摂りますし、献立もうまく組み立てるんです。日本でサラダとか食べるよりも何倍もの野菜を、毎食摂っているようなイメージです。油もわるものにされがちですけど、適度な油はお通じをよくしたり、野菜をたっぷり食べるための道具のようなところもあるので、みなさんが思っているほど重いものではない。
――なるほど。
酒徒 「はしご酒ダイエット」というキャッチをつけましたけど、基本的に僕はお酒がない食事に興味がないので、仕事がある日は朝と昼の食事をほぼ省いて、「リングフィット アドベンチャー」(Nintendo Switchのフィットネスソフト)を家でやってたんですよ。続ける工夫としては、成果=体重を記録していくと、ちょっと食べすぎて太っちゃったときも歯止めがきいて、これがけっこうよかったなと思いますね。あと、ストレスをためると続かないので、お酒はいっさい我慢しない。それでみるみる痩せました。なんかうそくさいですし、他の人にはまったくオススメしないです(笑)。

