内田 自分が捉えるその人というものを独自に見つけたいんですね。
浅野 だから原作や資料を読みたくないのかもしれません。殺し屋の役なのに「みんな自由でいいんだよ」という気持ちで演じたら伝わるのだろうか。これを実験してみたところ、「あなたのお芝居を見ていると、残酷なシーンなのになぜか自由な気持ちになった」というファンレターが届きました。
内田 伝わるんですね! 浅野さんは自由であるために内面を掘り下げるストイックな努力を重ねていらっしゃるということがよくわかりました。
浅野さんの結婚観についても伺いたいのですが、うちはディスカッションという名の喧嘩が絶えない夫婦なんですね。私は一緒に共鳴したいのに、あちらは違いを面白がりたい。お互いに自分の好みを変えたくないから、すごく難しいパートナーシップです。
母は「相手を替えても何も変わらない。自分が変わらなければ」と言いました。でも私は、パートナーが替わると私の人生も変わるのではないかと思うのですが、これは幻想なのでしょうか。べつに離婚したいわけではないのですが。
9年間付き合った妻と、結婚を決意したワケ
浅野 最初の結婚で離婚して、アメリカで仕事しようとロサンゼルスに何カ月か滞在して、レンタカーでご飯を買いに行ったときにふと、「オレって独りで死ぬんだ」と思ったことがありました。
だからといって再婚を急ぐわけではなかった。嫁にも話しましたが、すぐには結婚なんかできない、しなくてもいいとさえ思っていた。9年目に結婚したのは、彼女は僕がギャーーとなっても傍にいてくれたからなんです。
嫁は僕のことをいつまでも変わらないヤツだと思っているでしょうが、でもギャーーからキャーぐらいにはなれたと思うんですが。
内田 ある心理学の専門家が言うには、パートナーシップにおいて短いスパンで多くの関係性を築くよりも、一つの密な関係性をずっと続けていったほうが深度の深い幸福度を得られるのだそうですよ。