都心周辺部に形成されてきた大量の住宅は…

 これまで住宅地としての評価が高かった世田谷区では、2023年の空き家数が都内トップの5万8850戸になっており、このうち個人放置空き家は2万3840戸に及んでいる。これからの相続圧力の高まりは売却案件、賃貸案件の供給につながるだろう。

 練馬区は都心に通うサラリーマンの街として高度経済成長期以降に急速に住宅地化したエリアであるが、2020年の区内の高齢者数は16万491人。20年前と比べて1.67倍の急増。高齢化率も2000年の14.8%から21.7%と6.9ポイントもの高い伸びとなっている。

 こうしたデータをみるかぎり、都心周辺部に形成されてきた大量の住宅(マンションを含む)でごく近い将来、住人が消滅することが明らかといえる。拠出された土地に新しい家を建てる。中古マンションは購入して自分流にリノベーションして住む。こうした住宅選びが自在にできるようになるだろう。

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「住む」というニーズを満たす住宅は安くなる

 都心一等地のタワマンは富裕層のための金融商品として存続するだろうが、こと実需層にとっては何ら関係のない代物。「住む」というニーズを満たすためだけで考えるなら、意外と早い時期に住宅はかなり安いものになるだろう。

 Z世代(96年~2012年生まれ)、ましてやα世代(2010年~2024年生まれ)にとって住宅は一生分の給与債権を金融機関に捧げて買うようなものではなくなっているはずだ。そして今、期間35年、限界ぎりぎりのペアローンを組んで憧れの家を手に入れた夫婦にとっては、まだまだずっと残る残債を恨めし気に眺めることになっているかもしれない。

 終わりの始まりは2030年前後だ。あとたった5年でマーケットの姿は変わるのだ。