指揮官の行為が、A君の心を蝕む
誓約書騒動から3週間後の10月28日。A君が寮の風呂場でサッカー部の同級生に髪を引っ張られて言い合いになり、転倒して右肘と後頭部を強打。すると11月2日、再び平岡監督から呼び出しがあった。
「無期限の部活動停止を言い渡されました。確かに僕もその時、風呂場の丸椅子を叩きつけて壊してしまいましたが、相手は処分なし。せめて筋トレはしたいと頼んだのですが『自費でジムに行け』と」(同前)
その3日後には県大会の試合があった。サッカー部の応援席にいるA君を見つけた平岡監督は、
「サッカー部のところで応援するな」
と告げた。
小学校からサッカーを始め、憧れの名門校の門を叩いたA君。指揮官の行為は次第に心を蝕んでいった。
「血尿や難聴、不眠、蕁麻疹などの症状が表れるようになった。食事もまともに摂れず、親から寮にゼリー飲料やヨーグルトなどを差し入れてもらいました。11月26日、市内のクリニックを受診したら『身体化障害』と診断されました」(A君)
「問題はないと考える。」
一連のトラブルをどう考えているのか。平岡監督を直撃した。
――パワハラ疑惑について取材している。
「えぇ、そうなんですか(笑)。学校に預けているので、学校に聞いていただけたらと思います」
――誓約書に署名させた?
「いや、それはまた違う話なんですよ。私たちもしっかりと話していきたい。『なんでそうなるのかな?』ってところはある」
高校に質問状を送ったところ、こう回答があった。
「該当メールを理由に誓約書を提出させた事実はない。指導の必要があったため提出してもらったものであり、これがパワハラに該当するとは考えていない。(無期限活動停止については)やむを得ず指導上の措置を採ったもので、問題はないと考える。本校サッカー部においてパワハラがなされた事実はない」
A君は、名門サッカー部で活動を続けたいと切望している。