これはやはり「韓国で高校を卒業した」という経歴が重要であるように思う。若くして語学学習を始め、現地の高校生としても、K-POP練習生としても、現地の人たちと共に過ごす時間が長かった。いわば日本の大相撲の外国人力士たちがペラペラな日本語を話すような感じでレイは韓国語を話す。高校在学時には韓国語検定を受け、大学進学者レベルに相当する4級を取得したという。
実際に韓国のテレビ番組でもその魅力を発揮している。2022年8月、韓国の公共放送KBSの超有名トーク&歌番組「リムジンサービス」に出演したときのこと。
韓国語での歌とトークが続く約20分の構成のなか、レイが日本人だという点に触れられたのはじつに開始から8分40秒だった。よくある構成でいえば、まず冒頭で「日本人メンバーです」という断りが入って、「韓国語が上手ですね~」といった話題から始まる。しかしレイの場合は歌っても、喋っても、あえて日本人だと言及されることなく、ごく自然に楽曲のエピソードやメンバーとの思い出を韓国語で話し続けた。
しかもその8分40秒頃に、司会者からはじめて日本について切り出された質問に筆者は驚いた。
「韓国に来てからどれくらいになるんですか?」
K-POP界では少女時代のティファニー(韓国系アメリカ人)やBLACKPINKのロゼ(韓国とニュージーランドの二重国籍者)をはじめ、韓国のほか諸外国にルーツをもつメンバーが以前より活躍しているが、彼ら・彼女らに聞くような質問と同じだった。さりげない一瞬だったが、レイの言語力や韓国での存在感の大きさがうかがい知れるやりとりだった。
突然の活動休止→号泣した理由は…
いっぽうで、人気グループのメンバーとして活動することへのプレッシャーを感じさせる出来事もあった。レイは、2023年4月から2ヶ月弱、体調不良で活動を一時休止した。事務所側の公式発表は「動悸や息苦しさのため専門医と本人との十分な協議の結果、アーティストの健康を最優先とした決断」だった。
この間、レイはグループ初のフルアルバム「I've IVE」のプロモーション活動を休まなくてはならなかった。K-POP界では、10曲前後が収録されたアルバムを「フル(正規)アルバム」といい、「ミニアルバム」や「デジタルシングル」とは違って「事務所側の気合が入ったもの」として捉える。
彼女としては本当にその時期の休養が無念だったのだろう。復帰後、2023年年末にこのアルバムで韓国の有名な音楽賞「MMA」の「今年のアルバム賞」を受賞した際には大粒の涙を流しつつ「私はこの時の活動に参加できませんでした。本当に努力して作ったアルバムが、皆様に伝わって嬉しい」と韓国語で挨拶した。

