ちょうどその頃に出会ったのが現在の夫だ。モエさんの意思を尊重してくれる彼に「結婚しても仕事はやめなくていい」と合意をもらって結婚。妊娠したが、つわりがひどく、仕事を辞めざるを得なかった。
子どもを預けられず、仕事ができない生活に焦り
2019年春に娘を出産し、初めての子育てに奮闘しながら、モエさんは「早く仕事を再開したい」というあせりを感じていた。しかし、もうすぐ1歳になる娘は待機児童になり保育園に入れない。毎日娘の世話をしながら、夫以外の大人と話す機会はほとんどなく、気持ちがふさぎこんでいた。
「赤ちゃんと2人きりでずっと家にいる生活は孤独で、このままではいつまでたっても仕事に復帰できないと焦っていました。産後の体調はなかなか回復せず、朝から晩まで娘の世話だけで1日が終わってしまいます。体調がすぐれず、悲観的な気持ちからも抜けられず、産後うつのような状態でした」
子どもが預けられず、なかなか外に出られない。家にいながら、今後のキャリアにつながることが何かできないか。そう考えた時、京都で芸妓として働いていた自分の強みが生かせる仕事として思い浮かんだのは「着物」だった。結婚前の一時期、着付け師として働いていたこともあり、着付けの先生になることを目指そうと考えた。手始めに、娘が寝ている時間などを使って、着物の着方や着物の種類を紹介する写真や動画をインスタグラムに投稿し始めた。
ユーチューバーとの出会いで得た「発見」
転機は2020年2月だ。日本の生活を海外に向けて発信する「Paolo from TOKYO(パオロフロムトーキョー)」というYouTubeチャンネルを運営するアメリカ人YouTuberパオロさんから、取材の依頼が届いた。モエさんのインスタグラムを見て、「元舞妓」という経歴に興味をもったパオロさんが「日本のママと赤ちゃんの1日」に密着してYouTubeで紹介したいと連絡してきたのだ。