見世物以上でも以下でもないエンターテインメント

 築100年を超え、現存する最古の映画館のひとつである福島県の本宮映画劇場の館主・田村修司さんによれば、四番館、五番館というような田舎の映画館では、大都市の封切館から流れ流れて傷だらけになった新作だけでは商売にならず、弱小プロダクション製作のピンク映画をしばしば同時上映して客を集めていた。時には浪曲、講談から女子プロレス・小人プロレス、ストリップまで「実演」興行も開いていたという。

 ピンク映画ポスターは「ポスター屋」と身も蓋もない名前で呼ばれた、小さな印刷所に発注されていた。地方の小屋主は街角の壁に貼りつけた毒々しいポスターでお客を集め、ときには映写機を車に積んで、映画館すらないような小さな町や村へと移動上映して回る。

『セックス行状記 好色夫婦』(製作年不明・ワールド映画)

 田村館主いわく――「むかしはアクションもの、犯罪ものとかの劇映画2本に、15分ぐらいのストリップ映画をつけるのをよくやってたね。映画のあと、夜10時ぐらいから実演タイムを設けたり。そういうときは田舎でしょ、お客は手ぬぐいで頬かむりしたり、帽子にメガネで顔隠したりして来るんだね。実演では女子プロや小人プロレスも、よくやったよ。男は動きが激しいから無理だけど、女子ならここのステージでもできたんだ。まあ、見に来るほうはエロ目的だけどね。ストリップの代わりというか、水着姿を見に来たんだから。小人(のレスラー)が、女子レスラーに絡むでしょ。おっぱいをギュッとやって、そいでバーンって叩かれて飛んでったり」。

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「映画と実演」の幸福なマリアージュというか、ヤケクソのカップリングというか、そんなふうに牧歌的で、見世物以上でも以下でもないエンターテイメントとして映画を楽しめていた時代が、いまから40〜50年ぐらい前には確かにあったのだ。

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