店長Kの子分のような存在だった、王と楊
同店の王と魏について知る中国人留学生は説明する。
「王は見た目からしておとなしそうでした。無口な印象で、あまり喋っている姿を見たことはありません。魏も無口なタイプなんですが、一緒にパソコンの将棋ゲームで遊んだときに、常に勝ちにこだわっていて、負けず嫌いの性格なんだと思いました」
この人物によれば、客は店内のパソコンでゲームをしたり、中国の友人とメールのやり取りをしたりしていたという。同店に出入りしていた、別の中国人留学生は語る。
「店には王も楊も頻繁に来ていて、2人ともKの子分のような存在だと思っていました。傍目で見ていて、Kはあまりいい人間ではなかったですね。魏については、私は店で見たことがありません」
会員制の同店は、入会金が5000円だったこともあり、事前の予想よりも会員は集まらなかったようだ。そのため、03年1月にはすでに経営が苦しくなっており、Kは店舗の家賃の支払いに窮していたことが、後に判明している。
そこでKは王や楊、魏を巻き込んで数々の犯罪を起こすのだが、そのことについては改めて記す。
Kが店のカネを持って逃げして
先の中国人留学生は続けた。
「店を開けて何ヵ月かして、Kが家賃を払わずに、店のカネを持って逃げたんです」
それは03年3月頃だという。そのため、ビルを管理する不動産業者が、店の鍵を変えたのだと説明する。
「部屋の契約をしたMが困ってしまい、Sという男を新たな店長にしたんです。Mは『SはKみたいに悪い人間ではない』と話していました。新しく店長になったSが、パソコンの台数を増やすなどしたところ、前よりも人が集まるようになった。ただ、そうなったことで、風紀が乱れるから不動産業者に『(店を)やめさせろ』との話が寄せられるようになり、Mも店を閉めて退去することを決め、パソコン30台を売りに出したんです。すると店長のSが血相を変えてやってきて……」
Sに連れられた中国人と日本人の混成グループが、ワンボックス車に乗って集団でやってくると、Mの頭をパソコンで殴ったのだという。そのため、救急車やパトカーが集まる騒ぎとなったのだった。時期としては、日本で魏が逮捕された少し後だというから、03年8~9月のことである。
この事件が起きたことで、「A計画」の名残は、完全に雲散霧消したのだという。
