「親から引き継いだマンション」が厄介者に
外国人ばかりではありません。古くなった親のマンションの相続人たちも同様です。マンションもすでに60年の歴史があります。マンションで育った子供も多くいます。今、その親からの相続が発生して、子供が引き継ぐケースが増えています。
ところが子供たちもすでに自分でマンションを所有しているケースが多く、郊外にある親の古びたマンションにはあまり関心がありません。
都心部などにあって賃貸需要がある、売却すれば相応の値段で売れるマンションならば資産として相続することは「是(ぜ)」ですが、そうでないマンションはなかなかに厄介者です。
相続すると毎月、管理費と修繕積立金が請求されるからです。戸建ての家であれば、時折、通風や通水、メンテナンスが必要なのはそれなりに大変ですが、管理費用を請求されることはありません。
管理組合を悩ませる「消えた相続人」
ところがマンションは放置できても、管理費、修繕積立金の呪縛から解放されません。築古(ちくふる)のマンションだとすでに修繕積立金の額が何回も値上げされていて月額3万円や4万円になっているケースもあります。管理費と合わせて5万円程度の負担を請求される形となります。
固定資産税や都市計画税も加えると、何の使い道もない、親から引き継いだマンションを所有し続けるのに年間で数十万円。あまりに重たい負担ではないでしょうか。
こうした背景のもと、今マンション管理業界を悩ませているのが、親の住戸を相続した相続人が相続の事実を管理組合に届け出ないことです。
老健(ろうけん)(介護老人保健施設)などに入居してしばらく顔を見なかったおばあさんの住戸。ある月から管理費、修繕積立金の引き落としができなくなる。亡くなって銀行口座が閉鎖されたためです。
では誰が相続したのだろうか。待てど暮らせど届け出がない。そのうち管理費、修繕積立金の滞納が長期にわたる。分譲当初に提出されていた非常時の連絡先はすでに引っ越ししたのか応答がない。こうした構図です。