マンションも所有者も「老朽化」すると…

築40年を超えるようになると多くの住戸の所有者は70代から80代です。建物も所有者も老朽化しています。よくマンションは資産価値を重視しろ、などと言いますが、都心ブランド立地のマンションを除けば、ほとんどのマンションは建物の老朽化と共に資産としての価値の維持が難しくなります。

東京青山にある築50年のマンションなら周囲はヴィンテージマンションなどと言って持て囃してくれますが、横浜の郊外にある同じ築年数のマンションだったら、ただの古ぼけたマンションと言われるのがオチです。

管理組合で相続人が誰であるかを追いかけるのは大変な作業です。ましてや相続人全員が相続放棄を選択していると目も当てられません。

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「マンション空き家」の呪縛から逃れる方法

ただ国もようやく重い腰を上げました。

2024年4月1日より不動産を相続した相続人は相続によってその所有権の取得を知った日から3年以内に登記することが義務化されました。これまでは登記をせず、届け出もなかったものが、相続人の捕捉が容易になったと言えます。

ただ相続人から見れば、管理費、修繕積立金という負債はマンションを空き住戸化するペナルティのようなものです。そしてこの呪縛から逃れるには売却するしかありません。ところが思うように売却できればもともとそんなに問題はないのですが、最近はなかなか厳しい現実が突きつけられます。

牧野 知弘(まきの・ともひろ)
不動産事業プロデューサー
東京大学経済学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に勤務。その後、J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在は、オラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『不動産の未来』(朝日新書)、『負動産地獄』(文春新書)、『家が買えない』(ハヤカワ新書)、『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)『空き家問題』『なぜマンションは高騰しているのか』(いずれも祥伝社新書)など。
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