彼らから見て日本への旅行は今やまるで国内旅行のようなものなのです。だからいちいちホテルを予約するよりも、活動拠点としてマンションを買っておこうとしたわけです。
家賃100万円で借りる日本人はいない
しかし、私たちが国内に別荘を持っても、はじめのうちは頻々(ひんぴん)に利用してもそのうち飽きて、行く回数が減るのと同じ。彼らも毎月のように行くわけではないので、こうした住戸が利用回数の減少と共に、ほぼ空き住戸化していきます。
私もある香港人が所有している港区高輪にあるタワマンの運用をお願いされ、現場を見学したことがあります。専有面積約100m2の2LDKなので中は広々。でも部屋には生活感がまったくありません。住んでいないからです。
リビングにはソファとテーブルがある程度。寝室はキングサイズのベッドが設(しつら)えてありますが、クローゼットはガラガラです。ベッドの上にはポツンとブランド物のバッグが放置したままの状態です。
管理、運用している在日中国人によれば、購入当初は頻々に利用したが、ここ2年はまったく利用されていないと言います。
賃貸も考えているのですが、希望賃料が月額100万円。購入金額が2億円だったので、利回り6%を考えているのでしょうが、このマンションをそもそも月額100万円で借りてくれる日本人は存在しません。仕方がないので放置しているとのことでした。
家賃を60万円くらいに下げれば可能性があると申し上げましたが、運用担当者は首を振って嘆息するばかり。
マンション全体の「治安」にも影響
また売却も検討しているが、このクラスになると日本人の買い手も少なく、中国でも日本で買った超高額マンションがエグジット(売却)できない、という噂が蔓延し始めていて買い意欲が急速に萎(しぼ)んでいるとのことでした。当面空き住戸として放置することになるだろうと運用担当者は顔をしかめていました。
こうした住戸は一部がインバウンド客に民泊として提供される、日本で暮らす同朋にしばらく賃貸するようなケースもあり、マンション管理規約を守らないなどのトラブルが生じています。