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鳥肌が立つような歌詞ってどんなんだろう

―― 歌詞はどういう風に書かれてたんですか。

吉田 漠然と世の中にある“いい詞”みたいなものを目指していこうという感じでした。風景とか気持ちとかを、詩的で綺麗な表現に置き換えて書くのが“いい詞”なんだろうなとか思っていました。鳥肌が立つような歌詞ってどんなんだろうとか。なんですかね、感動とか美しいって意味での“いい詞”を書きたかったですよね。

―― それが変わってくるというとアレですけど、いわゆる“いい詞”とは違う方向になったきっかけはあったんですか。

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吉田 詞については、こうあるべきなんだろうっていうことを何も考えずやりすぎたなってことが多かったんですよね。その時に、メンバー(鳥居真道)を増やすタイミングで、自分ができることとか、何が面白いと思うかとかを突き詰めようと思い直したんです。“バンドマンの常識”みたいなところをできるだけ排除しようと。それから今の感じの歌詞になりましたね。言葉にしてこなかったものを言葉にすることを目指す方向というか。

 

―― 作詞の方法で誰かに影響を受けたことはありますか。

吉田 町田康の本を読んでたら、「歌詞とか送ってくるやついるけど、出てくる単語の種類が少なすぎる」みたいなことが書いてあったんです。だいたい「恋」とか「好き」とか「雨」とか、そういうのばっかだと。それはちょっとどこかで意識してましたね。普通は歌詞で使わないような言葉でも恐れずに使おうと。あとは哲学の本をその時期読んでたので、「俺、今やばいもの、めちゃめちゃ変なもの書いてんじゃないか」とか思っても、「これは哲学っぽいから大丈夫」みたいな支えにはなってました(笑)。

卒論はニーチェでした

―― 哲学の本ってどんなものを読んでたんですか?

吉田 文学部の哲学専攻だったのでいろいろ読んでたんですよね。最初に読んだのは永井均の『ルサンチマンの哲学』って本なんですけど。あとは普通に授業に関係あるサルトルとかハイデガーとかを読んで。そんなわかったとも言えないんですけど。でもなんか哲学の姿勢はわかったというか。漠然と思っていたけど言葉にしてないものって、結構いっぱいあるなと思いましたね。哲学をやっていると、ちょっと気が引き締まるというか、そういうのもありましたね。

 

――卒論って何だったんですか?

吉田 ニーチェでした。

―― 歌の作風が変わっていって、お客さんの反応って変わりましたか。

吉田 前とは全然違うというか、周りのバンドマンも優しくなって企画にすぐ呼んでくれたりとか。あぁ、やっぱいろいろ変わるんだなと思いましたね。

―― 大学の頃からプロになろうって感じだったんですか。

吉田 プロになりたいのかどうかって突き詰めて考えることもなかったんですけど。好きなアンダーグラウンドのバンドと対バンしたり、ライブハウスのかっこいいイベントに出れたら嬉しいな、くらいしか先を見てなかったですね。そういうバンドのイベントに行ってアングラ界で有名な人たちの会話を聞いてると、対等に話すことすらできない世界に自分がいるような気にもなりました。だから、自分も引け目を感じずに堂々と生きていけるようになるには、あの人たちとまず会話できるようにならなくちゃいけないんじゃないかとか、そんなことばっかり考えてて、お金をどう稼ぐとかあんまり考えてなかったです。「お金的にマイナスにならずバンドできてたら最高じゃん」ぐらいな感じでした。まぁ、大学時代は結局マイナスだったんですけど(笑)。

 

#1 “ポスト星野源”トリプルファイヤー吉田が明かした高1時代の「黒歴史」
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#3 元気がないのが取り柄 トリプルファイヤー吉田が語る「タモリさんと星野源さんのこと」
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写真=榎本麻美/文藝春秋

よしだ・やすなお/1987年香川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2006年に結成されたトリプルファイヤーでボーカルを務める。2012年5月「エキサイティングフラッシュ」、2014年2月「スキルアップ」、2015年9月「エピタフ」、2017年11月「FIRE」を発表。バラエティ、ドラマなどテレビ番組にも多く出演し、『タモリ倶楽部』では「バイトで怒られっぱなし!?  リプルファイヤー吉田の適正バイトを探す」で全編にわたって特集を組まれた。